第四十六部 第三章 現実化
「これ、一体どういう事かな」
ムラサキがアオイに聞いた。
「これ、多分、オリンピアの天使のオフィエルのせいだ」
アオイの顔が歪んだ。
大きな許嫁達が寝ているベットの真ん中で、ユウキが目を開けたまま、静かな息をして動かない。
鈴の二代目さんが、ユウキの胸の鼓動を聞いた。
「特に異常は無いと思うんですが」
「夢に引き摺りこまれたと言う事か? 」
龍女さんが凄い顔してる。
「いや、オフィエルはオリンピアの天使の中でも穏健派のはずです。ひょっとすると、彼は旦那様の過去と現在と未来を見ようとしてるのかも? 」
「過去と現在と未来? 」
ミツキが心配そうに聞いた。
「ええ、過去の辛い事や嬉しかった事、そして、現在の人間関係とそして、未来の本人の夢を見るのです」
「そ、そんな事出来るの? 」
「出来ます。オフィエルだけの特殊能力ですが、彼は夢を操り、人や神族や魔族の無意識下の心を探れるのです」
「マジで? 」
ミツキの問いにアオイが頷いた。
「分かったわ」
突然、そこに、女媧の声が響いた。
「お義母様? 」
「ええ、緊急事態なの。こちらに無理にテレポートさせるから、皆、服を着てくれるかな? 五分後にこちらに呼びますから」
女媧の緊迫した声が響く。
慌てて、ミツキやミヤビ王女などがまだ寝てるユイナとか起こして服を着させる。
「とにかく、急ぎましょう」
ミヤビ王女が皆に言った。
そして、五分後に女媧のいる巨大な部屋に全員の許嫁とレイナさんにお姫様抱っこされたユウキが現われる。
ユウキはミツキが服を着せたが、目の開いた浅い呼吸のままだ。
「ちょっと、映像を見てくれる? 」
女媧が許嫁達に言った。
巨大な部屋の中央のフォログラフィーに東京が映った。
そこに掃除用具に囲まれて、床に汚い毛布にくるまった全長一キロメートル近い貧相なヨーロッパの中世風の服を着たユウキがいる。
「「「「「「「「「「「「ええええええええええええ? 」」」」」」」」」」」」」
許嫁全員が衝撃を受けた。
何故か、ユウキの目のあたりには黒い目線を隠すもので顔がイマイチはっきりしない。
しかし、許嫁達には、それがユウキであるのが分かる。
「あの黒いのは? 」
ミツキが聞いた。
「あれは、ユウキ様だと分からない様にこちらでフォログラフィーで作ってます」
女媧の横の黒服が答えた。
「あれは何なの? 」
女媧がアオイに聞いた。
「あれは恐らく、上位天使オフィエルが旦那様に見せている夢でしょうね。それを<終末の子>としての力が夢を現実として認識してしまってる部分で、幻影化してるのだと思います」
アオイが答えると、横でムラサキも肯定するように頷いた。
「こ、こんな事が起こるなんて……」
女媧の声が震えた。
神である彼女にも初めて経験する事だったからだ。




