第四十六部 第二章 オフィエル
目が覚めたら、辺りが何もない灰色の土地になってる。
「なんだ、これ? 」
俺が辺りを見回す。
誰もいない。
突然目の前に巨大な岩が現われた。
その上に天使が座っている。
天使と言うと碌な事が無いから、思わず身構える。
「私は確かにオリンピアの天使だ。オフィエルと言う。だが、君と戦う気は無い。君の真意が知りたい」
「真意? 」
「私は過去、現在、未来を幻想として、君の夢の中に出せる。君が何を見て来て、今はどう考えていて、そして、これから何をしたいのか心の奥底の本音を知りたい」
オフィエルと言う天使は笑って俺を見た。
心の奥底ってええええ?
何か恥ずかしいものを見られるのだろうか。
まずい。
碌な予感がしない。
「まあ、そんな変なものは出ないよ。君の本当につらかった事とか楽しかった事をまずは見せて欲しいな」
オフィエルが笑った。
「いや、プライバシーなんで止めてもらえますか? 」
俺が必死に止めた。
「心配するな。これは君の夢の中だけの話だから」
「夢? 」
「そう、これは君の夢なんだよ」
「え? 」
俺が辺りを見回して、自分を触ってみる。
こんなに実感あるのに、夢なのかよ。
「さあ、見せて見たまえ」
「えええええ? 」
「まだ、抵抗しているな。たいしたものだ。私の力でこれだけコントロールできない夢を持っているとは。まだ目覚めていない筈なのに、すでにブロックしているんだな」
オフィエルが笑った。
「いや、別に何もしてないけど」
「いやしてるよ。実際に君が辛かった映像が出てこない。私はね。君が本当に何をしたいのか知りたいのさ。<終末の子>という意味では無い。君の本当の本質に触れたいんだよ」
「えええと」
「再度言うが私に敵意は無い。私は君を確かめるのとためしに来たのだ。ベトールから話は聞いている。私はどちらかと言うと、ベトール寄りだ。君が人類のみならず、天界や魔界やすべての世界にどのような影響を与えるのか見てみたいのさ。その為に、過去と現在と未来が見たいんだ」
オフィエルが説得するように語る。
「いや、そう言われても……」
「信頼してくれ。私は君とは直接戦った事は無いし、勿論、君の前世ともない」
「えええと」
「おや、心の方は認めてくれたようだな」
目の前に情景が映し出される。
「これが、君の辛かった過去か」
それは、コンチュエから逃げだした時の姿だった。
船室の掃除用具部屋のスキマで、臭い毛布を被って震えてる。
うわ、やっぱりこれなんだ。
これがなければ、騙されたとはいえ両親のバス事故になるんだろうけど。
くくっ、本当に見てて辛い。




