第四十四部 第十二章 十二使徒
いきなり、アオイが俺の前で結界で何かを弾いた。
「くくっ、やはり簡単にはいかんか」
目の前に光り輝く金色の羽根を持つ女性の天使が現われた。
フルだ。
「おや、今はベトールさんとの話し合いの最中では? 」
アオイが困ったような顔をした。
「ふはははっ、我らの恨みがあんなもので消えると思うな。ベトールめは心が疲れすぎているのだ」
結界と結界をジリ合わせながら、フルが叫ぶ。
「あ、貴方は? 」
母さんが驚いたようだ。
「何か知らないけど、俺を狙ってる上位天使さんのフルさんですよ。前世がどうのとスピリチュアルな方のようで」
俺が母さんに説明した。
「くくくくく、何がスピリチュアルだ。貴様がそんな奴だから、我々はっ! 」
フルの結界とアオイの結界が火花を散らす。
「くっ、相手の階級が上過ぎて、私の力だと厳しいかも」
母さんが初めて弱気になった。
その間にもじりじりと結界でフルが俺たちを潰しにかかる。
「ちょっと、まずいですね。大いなる口を……」
「馬鹿め、今、大いなる口は動けんわ」
フルが憎々しげな顔をした。
部屋の空間が歪み始める。
ミツキがフルとアオイの結界のぶつかり合いに阻まれてこちらからの死角へと入った。
どうも雰囲気がおかしい。
「くっ、これ、まずいのか? 」
俺が轟天を抜いて身構えた。
「御名答」
金色に輝く天使が金色に光る剣を持って突っ込んできた。
オクだ。
まずい、轟天じゃ無理だ。
親父を盾にしたとしても、俺が貫かれる。
詰んだ。
初めて、そう思った。
その時、ひょいっと言う感じでムラサキがオクの前に立った。
「馬鹿っ! 」
俺が慌てて叫んだ。
前に出るだけ無駄だ。
相手は必殺の構えなのに、盾になるのは死ぬ人が増えるだけだ。
ムラサキの全身に入れ墨のような文様が光り輝きながら、次々と現れた。
ムラサキの姿が豹変していく。
金色の輝く様な髪と赤い目。
入れ墨のように全身を這う文様は光るイバラとなってムラサキの右手の前に集まって、巻きついて盾になった。
そして、その盾は驚いた事にオクの必殺の剣を弾いた。
「嘘だろ? 」
「誰だ、貴様! 」
俺とオクがそれぞれ同時に叫んだ。
「十二使徒のうちアスモデル」
ムラサキが静かに赤い目でじっとオクを見つめながら答えた。
それと同時に、光るイバラがムチのようにしなると、幾重にも重なってオクに痛撃を与えた。
その衝撃により、後ろの壁は紙で出来てるかのように切り裂かれた。
「十二使徒だと? 」
オクの顔が歪んだ。
「「「「「「「「ええええええええええええええ! 」」」」」」」」
全員がムラサキの変貌を見て、唖然とした後に同時に絶叫を上げる。




