第四十四部 第一章 プロローグ
鈴が弱すぎると言う事で母さんが他にも鈴がいると仮定しての襲撃を警戒して、次の島に着くと警戒を厳重にするように皆に指示を出した。
捕まえた鈴の方は少女なだけに母さんの爆砕攻撃のダメージもあり、すぐに医療班を呼んで治療をさせることになった。
勿論、その病室にも神族の強者を警戒に回すそうだ。
それよりも、何か思いもしないことになって困ってる。
今夜いきなり、簡単なパーティなのだそうだが、俺を紹介するらしい。
いや、そういうのは碌な事にならんからと言ったのに、押し切られた。
これはヤバイパターンなのではと思うが、まあ、母さんいるし大丈夫かなどと了承してしまった。
随分、俺も油断していたのだと思う。
母さんと関係が深い、英国の貴族の一家がすでに島で待っていたのだ。
いろいろと裏の世界にも精通しているそうで、イギリス王家と非常に近しい存在であるが、あまり表には出ずに、裏で動いている黒幕のような家族らしい。
まあ、ぶっちゃけ、娘がシャーロットの親友らしいのだが。
母さんも家族付き合いしていて、流石に親父もそれを勝手に許嫁には出来ないから、俺もその辺は気にしてなかった。
とりあえず、母さんと付き合いの深い方だけど、礼儀と言う事で俺と許嫁も略式の正装を着た。
俺はヤマト仕立ての戦前のような軍服で、シャーロットとか許嫁は煌びやかな洋装の正装をしていた。
母さんが別の服を着せたかったみたいだが、そこは国王が押し切った。
幸い、女性の服は略式の正装はあちらの世界も同じなので、違和感が無くて良かった。
簡単な略式のパーティーみたいな中で、<終末の子>として社交デビューの練習をさせたかったらしい。
明日にはシャーロットやエレナのご両親も来るらしく、再度のパーティだそうで胃が痛い。
「ソフィア」
その中の十七歳くらいの金髪碧眼で穏やかな笑顔で笑っている美少女にシャーロットが抱きしめて再会を喜んでいる。
「お帰りなさい。やっと旦那様を捕まえたのね」
「許嫁が他にも一杯いるんだけどね」
シャーロットが苦笑した。
「ソフィア」
エレネがソフィアに会釈した。
「貴方もお元気そうで何より」
ソフィアも会釈した。
エレネがニッコリ笑った。
駄目だわ。
とても溶け込めない。
世界が違うわ。
そしたら、親父が無精ひげを綺麗に剃って、無茶苦茶ダンディな格好で現われた。
「……汚ねぇ」
思わず呟いてしまった。
親父の歩き方と言い、動きと言い、上流階級のそれだ。
ふと見ると、カザンザキスさんとかは分かるが、国王とか宰相とかまでちゃんと上流階級のそれだ。
他の許嫁も同じだ。
王女とかだから慣れてるのか。
むう、育ちの違いがこんな所で出るなんて。
俺もマリナみたいにお腹痛いと逃げればよかった。
「どうした。挨拶しないのか? 」
親父がにこやかな笑顔で聞いてきた。
いつもの下卑た笑いとかどこ行ったんだよ。
親父が似あってるのは裏酒場の鯖味噌煮定食だろうに。
ふと、見るとミツキもちゃんと挨拶とかこなしてた。
あんまりだ。
上流階級の礼儀作法とか勉強してないの俺だけかよ。
ぼっちを何だと思ってるんだ。
よくもそんなことを。
グレタさんでもお怒りだぞ。
「挨拶くらいはして来いよ」
親父に言われて、仕方なくシャーロットとエレネの方に行った。
「貴方が、ユウキさんですか」
ソフィアがにっこり笑った。
「はい」
軽く会釈をしながら答えた。
「シャーロットさんとは親友ですので、私も楽な感じで構いませんよ」
ソフィアさんがほほ笑んだ。
なるほど、美少女だな。
「では、ソフィアさん、これからもよろしく」
そう言って握手しちゃった。
気が付けよ、俺。
手を握った瞬間に光って、ヒモ・モードが発動した。
えらいことになってしまった。
ほんげぇぇぇぇぇ!




