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全部社会が悪いんやっ! 〜ある救世主として召喚された男の話   作者: 平 一悟
人物紹介は470から475のあたりにあります。
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第一部 第五章 戦端

 雨が降っている。


 酷く冷たい雨だ。

 

 やはり、鉄砲隊と大砲で戦うだけあって、簡単な馬防柵は作ってある。

 

 織田信長の長篠の戦みたいだな。騎馬の突撃を警戒してるらしい。


 だが、問題は雨が降っている事だ。


 雨が止めばいいのだが、止まないなら火縄銃と大砲は使うのが難しい。


 しかも雨は向かい雨。


 こちら側は目を開けるのも厳しい。


 かなり大変な戦いになりそうだ。


 クニヒト中尉とミヤビ王女とムラサキと護衛の騎士数名を連れて馬防柵の向こうのアレクシアから続く街道を見る。


 山々の狭間をこちらに街道が通る地形でアレクシアの兵も街道を通らざるを得ない。

 

 そう言えば、護衛と世話係とか言ってたが、実はムラサキは軍経験もあり特殊部隊にいて階級も准尉だったそうだ。


 暗殺とか敵地での破壊工作の経験もあるそうで、どうりで忍者みたいな雰囲気がある。


 数キロほど後ろにイジュウイン大公の第二陣とさらにその数キロ後ろに近衛のサイトウ公爵の第三陣がある。


 近衛が出陣してるわけだから、当然、国王と宰相が第三陣にいるわけだ。

 

「参ったわね。雨が降るんじゃ厳しいわね」


 ミヤビ王女が厳しい顔だ。


「こうなると、雨でも問題なく使用できる轟天(ごうてん)に頼るしか無いですね」


 クニヒト中尉も渋い顔だ。


 ミヤビ王女が自分の俺と同じ赤い色の宝石が埋め込まれた右手の甲を見る。


「私のスキルは火炎系だから、雨が降ると役に立たないわ」


「私も狙撃系なんで向かい雨だと厳しいです」


 兵士達も火縄が濡れぬように、いろいろと対策をしていた。


 だが、いざ合戦になれば濡れてしまうだろう。


 クロダ公爵が護衛の騎士達を連れてこちらにやってきた。


「そろそろ、敵が来ます。ご準備の方はいかがですか」


 ミヤビ王女がいるせいか丁寧な言葉使いだ。


「それなんですけど、轟天(ごうてん)ってどうやって使うんですか? 」


 とりあえず、クロダ公爵にあまり俺は相手にされてないようだが聞いた。

 

「昨日、守護神に聞いておきなさいと言ったじゃないの! 」


 ミヤビ王女が呆れたような顔をした。


「聞き方がわからんのだけど」


「胸に手を当てて、守護神--貴方なら不動明王を顕現するように願うだけよ」


 早速、胸に手を当てて、不動明王が顕現するように願う。


 すると、目の前に火炎が現われて不動明王が現われる。


 やはり、仏様はレアなのか、クロダ公爵のまわりの騎士達から感嘆のため息が漏れる。


「私を呼んだか、ユウキよ」


「はい。この轟天(ごうてん)の使い方を知りたいのですが」


「簡単だ。構えと言って刀を上段で振り上げる。すると刀が炎をあげて光るので、後はお前が狙ってるところに刀を振りぬくだけだ」


「なるほど、構え」


 俺が轟天(ごうてん)を振り上げて、唱えたら、刀の刃が燃え出して光り出した。


「ちょ、ちょっと、なんでここでやるのよ」


 ミヤビ王女が慌ててる。


「えーと、不動明王様。これは止めれるんですか」


「聞いてからやりなさい。全く。()めと刀を降ろすだけで元に戻る」


 呆れたように不動明王が答えた。


()め」


 と言って刀を降ろすと刀の刃の炎と輝きが止まった。


「おお、意外と簡単なんだな」


 俺がマジマジと轟天(ごうてん)を見る。


轟天(ごうてん)は一日に一回しか使用できない。その後は単なる刀としてしか使用できない。さらに、もう一つだが、恐らく轟天(ごうてん)を使用すれば、経験値が上がり、間違いなくスキルが発現するはずだ。スキルの名前は耳に聞こえてくる。それを叫ぶだけでスキルは発現する。忘れるな」


 不動明王がこと細かく教えてくれた。 


「ありがとうございます」


 俺が不動明王にお礼を言うと、不動明王は消えていく。


「しかし、仏教とか言うんだったっけ。本当に珍しいよね。大体、私達は貴方達の言う神道の神様が守備神になるんだけどね」


「へー、ミヤビ王女の守護神様はどなたなの」


「私は火之迦具土神ひのかぐつちのかみ)様よ」


「俺は天若日子(あめのわかひこ)様だ」


 クニヒト中尉が答えた。


「さてと、楽しいお話もそこまでにしていただきましょうか」


 クロダ公爵が薄笑いを浮かべてた。


 と同時にまわりの騎士がミヤビ王女を捕えて剣をつきつける。


「な、何をするの? 」


「き、貴様ら姫様に何をする」


 クニヒト中尉が抜刀するが、ミヤビ王女が人質になって動けない。


 ムラサキや騎士達も抜刀するが動けない。


「さて、刀を捨てて貰いましょうか。でないと姫様が死にますよ」


「貴方は何を考えてるのクロダ公爵! 」


 ミヤビ王女がクロダ公爵を睨み付けた。


「ははは、これで轟天(ごうてん)も姫様もおみやげにできる。アレクシアとは話がついているんですよ」


「公爵、貴方は裏切ったのか」


「私はね、勝てない戦には興味ないんです。見なさいこの雨を」


 雨が段々と強くなってくる。


「ま、まさか」


 ミヤビ王女が動揺してクロダ公爵の顔を見る。


「その通り、天候をコントロール出来る神器 龍玉ですよ。アレクシアは、あれを手に入れたんです」


「それでアレクシアがここの所強気だったのね」


「その通りです。我が国は火縄銃や大砲が強みですが、雨が降っては、それはどうにもなりません。後は轟天(ごうてん)さえ押さえれば、アレクシアの勝ちです」


「貴様、公爵のくせに恥を知れ! 」


 クニヒト中尉が横で怒鳴る。


「公爵だろうがなんだろうが、負ければ意味が無いんですよ。さあ、皆さん武器を捨ててください。ほら、アレクシア軍が山の狭間の街道に見えてきましたよ」


 クロダ公爵が勝ち誇ったように笑った。


 街道にアレクシアの軍勢が整然とこちらに向かって来ていた。


「く、くそっ」


「ま、まって! 聖樹様に逆らってこんな事をすればどうなるか分かっているの? 」


 クロダ公爵の右手の甲を見ながらミヤビ王女が睨んだ。


 だが、そこには手袋型の呪符が巻きつけてあった。


「ちゃんと、それも対応してますよ。当たり前じゃないですか。これはアレクシアの神器を封印する呪符です。さあ、これですべて分かったでしょう。諦めて武器を捨てなさい」


 右手の手袋型の呪符をミヤビ王女に見せつけながら、クロダ公爵が嘲笑った。

 

 クニヒト中尉やムラサキや俺達の護衛の騎士達が怒りで震えながら剣を捨てる。


「はははははははは、所詮こんなものですよ」


 クロダ公爵が嬉しそうだ。



「構え」



 俺が刀を振り上げて叫んだ。


 刀が炎をあげて光り出す。


 

「「「は? 」」」


 

「ま、待て、貴様何をしている」


 俺がまっすぐにクロダ公爵と人質のミヤビ王女を見ながら刀を構えた。


「ちょっと、何をしてるんだ」


「な、何? 何なの? 」


 クニヒト中尉やミヤビ王女が動揺してる。


「俺はこういう時にどうするか亡き父から教わってきたんだ」


 俺が自信満々に答えた。

 

「な、何を教わったと言うんだ」


 クロダ公爵が動揺してる。



「死なばもろとも」



 そこにいる全員がドン引いた。


「ちょ、ちょっと待て。何を言っている」


 クロダ公爵が慌てて聞いた。


「だって、負けたらどうせ処刑じゃん。それなら、皆で死のう」


 ニッコリ笑って俺が答える。


「「「「えええええええええ」」」」


「ま、待て。諦めるな。まだ死ぬと決まったわけじゃないぞ」


 クロダ公爵がオロオロとしている。


「だって、敵も目の前だし助からないし」


 いい笑顔で俺が答える。

 

 多分、今、笑顔で開いた俺の口の歯がキラッと光ったね。うん。


「いやいや、お前の命は助けよう。それでどうだ」


「だって、味方を裏切ってる人の約束なんて信じられないし」


「分かった。アレクシアと連絡とってちゃんと約束するから」


「ちゃんとアレクシアのえらいさん立会いで証文かなんか貰わないと信じれないな」


「おい、貴様も裏切る気かっ! 最低の奴め」


 横で聞いていたクニヒト中尉がブチ切れた。


「裏切るも何も、俺、こっちに来たばかりだし」


「さ、最低! 最低よ! 」


 ミヤビ王女も呆れたように叫んだ。


「最低で結構です。ほら、ここにアレクシア軍が到着するまでに連絡取ってきてよ」


「わ、分かった。連絡するから撃つなよ。絶対に撃つなよ」


 クロダ公爵がまわりの騎士にアレクシアに連絡をとりに行かせる。


「し、信じられない。貴方が裏切ったら聖樹様が必ず貴方を……」


 と思いついたように言って……ミヤビ王女が黙った。


 使者のやり取りでアレクシアの進軍が止まり、目の前の平野に兵士が大量に集結しだす。


 すでに一万はいるだろう。凄い数だ。


 アレクシアの第一軍は、そこで小休止するようだ。

 

 そのアレクシアの第一軍から数百名の騎士を連れたアレクシアの将軍らしい騎士がこちらにゆっくりと向かってくる。


「ほら、アレクシアの第一軍の将軍がお前と約束する為に来たぞ。早く、その物騒な刀を降ろせ」


 クロダ公爵が困り果てた顔をした。


 ある程度アレクシアの将軍がこちらに近づいたところで、俺が刀を構えたままアレクシアの軍の方に向いた。


「な、何をしている! 」


 クロダ公爵が動揺している。


「愚かなアレクシアの将軍よ! クロダ公爵は裏切っていない! 騙されたな愚か者! 」


 俺が声が張り裂けんばかりに叫んだ。


 それと同時に振り上げた刀を次々と軍団が集まり小休止しているアレクシア軍の第一軍に向けて振り下ろした。


「えええぃっ! 」


 凄まじい火箭が敵陣に届くとキノコ雲をあげて大爆発が起こった。

 

 激しい爆風で皆が吹き飛ばされたのを利用して、ミヤビ王女も自分を捕まえてた騎士から逃げた。


 爆発の後に巨大なクレーターが出来て、小休止していた一万のアレクシアの第一軍は文字通り消滅した。


 交渉に向かってきた将軍は消滅した自陣を見て呪いの叫びをあげて、全力でアレクシア軍の第二軍の方へ馬を走らせる。


「ああああああ、待ってください! これは! これは何かの間違いで! 」


 クロダ公爵が狂ったように叫んでる。


「逃げるぞ」


 俺がミヤビやクニヒト中尉に囁くと皆を引っ張って目の前の馬防柵を越えた。

 

 そしてアレクシアの軍が居ない斜め前側の山に向かって走り出す。


「ち、ちょっと! 行く場所が違う! 」


「第二陣のイジュウイン大公の所に逃げるんじゃないのか? 」


 ミヤビ王女とクニヒト中尉が叫んだ。


「こうなったら誰が裏切ってるか分からんだろうが! 」


「ま、待て! 貴様ら! 奴らを止めろ! 」


 クロダ公爵の側近らしい騎士が叫ぶ。


「スキル逃亡」


 突然、耳に声が聞こえる。これがスキルか。


「スキル逃亡! 」


 俺が叫んだ。


 それと同時に身体に力がみなぎる。


 クニヒト中尉とミヤビ王女を抱き上げて走り出した。


 物凄い膂力だ。


 しかも早い。


 ムラサキとクニヒト中尉の護衛の騎士達も全力で走ってついてくる。


 そして、同じように馬防柵を乗り越えて追いかけようとしたクロダ公爵の騎士達は、足元から突然生えてきた植物のつるに巻き込まれて動けなくなる。


 幾人が鉄砲を構えて撃つが、植物のつるがたくさん生えて盾のようになって逃げる俺達を守った。


「くそっ! 逃げられてしまう! 追え! 追うんだ! 」


 言いながらも次々とつるに巻かれてクロダ公爵の騎士たちは動けなくなる。


「なんだ、このツルはぁぁぁ! 」

 

 騎士達が切っても切ってもはえてくる植物に罵声を浴びせる。


 そんな中、頭を抱えてクロダ公爵が膝から崩れ落ちた。


「こんな、私はアレクシアを騙していない……違うんだ……違うんだ……」


 クロダ公爵がうつろな目で呟いていた。











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