第四十三部 第二章 禁忌(ターヴ)
空間で艦隊ごと遮断してるせいだろうか?
軽空母の甲板で寝てる爆龍王ゴウオウのいびきが凄い。
これ以上揉め事起こすと困るので、酒をありったけ飲ませたのだ。
相変わらず、酒には弱いようだ。
酒飲みながらの鼻歌も五月蠅かったが、ひょっとして、人間の姿にしたら単なるおっさんなんじゃないかと思ったりもする。
とりあえず、食堂のテーブルで座って紅茶をいただいてる。
前には親父と祝融さんとがいてアオイ達も近くで座ってる。
母さんは気持ちを静めると言って船長室に籠ったままだ。
「母さんはどうすんの? 」
ミツキが聞いてきた。
「まあ、自分で落ち着くだろ」
親父が軽い。
「心配しないでも良いよ。君のお父さんが怒らせて、何度もこんな事はある事だから」
祝融さんが笑った。
おーい。
いつも、怒らせてんのかよ。
「まあ、そっちよりも、ユウキ君に聞きたいんだが」
祝融さんが今までに無い真剣な顔で聞いてきた。
「正直な話、この世界をどうしようと思ってるのかな? 」
「ええ? そんな重い話をいきなり聞かれましても」
「だがな、前世がどうだのは我々の世界にとっては枝葉の問題で、我々にとっては君がどうするのかが全てなんだ。君が滅ぼそうと思った方は滅ぶし、助けようと思った方は助かる。それだけの力があるんだ。少なくとも君にはね」
祝融さんが真剣に俺の目を見た。
「ガムビエルは十二使徒の中ではかなり弱い方だ。こちらが核ミサイルをいくつもとうが、十二使徒には効かない。この世界自体がそう作られてるからな」
親父が俺を見た。
「えっ? そうなの? 」
祝融さんがびっくりしてる。
「あれ? これ、知らない? 」
親父の質問に祝融さんが頷く。
「じ、じゃあ、聞かなかった事に」
親父が慌てて言った。
「いやいや、そりゃ、駄目だろう」
祝融さんが慌てて、親父を見た。
親父が近くのテーブルでミツキと一緒に座ってるアオイを見た。
「ええ、禁忌です」
「マジか」
親父が慌てて口をふさぐ。
「禁忌って言われても、ちょっと待ってよ。こっちとしたら、核を量産するしかないんだし」
祝融さんが凄い困った顔してる。
「どうしょう」
親父がアオイにすがる様に見た。
「まだ、大丈夫だと思うけど、禁忌を繰り返すと消えますからね、この世から。本当に最初から居なかったことになりますし」
アオイも困ったように言った。
「え? 消えるの? 」
「ええ、繰り返しますが、最初から存在しないことになります」
「やば過ぎでしょ」
「そう言う風にこの世界が作られてるからしょうがないです」
アオイが真面目に答えた。
笑えない。