第五部 第九章 <終末(おわり)の子>
轟天を構えたものの、良く考えたら一発しか撃てない。
当たっても、倒せるかどうか分からない。
何と言うムリゲー。
ここは逃げるしか無いのか。
でも、逃げないって言っちゃったようなもんだし、どうしよう。
ワイバーンと戦う爆龍王ゴウオウを見ながら、そう思う。
そもそも、相手がチートすぎるだろ。
爆龍王ゴウオウの口から吐き出す光線をワイバーン達が必死によけた結果、首都グアルダの向こうの方にいくつもキノコ雲が上がる。
どうする。
多分、轟天で死なないよね、こいつ。
その時、頭に言葉がひらめく。
<ゴウオウを轟天の爆発で上空にほうり上げて>
「ま、まさか、リヴァイアか! 兄弟来てくれたのか! 」
俺が叫んだ。
「兄弟! ありがとう! 」
アポリトも目を潤ませた。
「兄弟? 貴様ごときの兄弟が一人増えたとして、何があると言うのだ! 」
爆龍王ゴウオウがせせら笑うように叫んだ。
「黙れっ! ぼっちで繋がった、俺達、義兄弟を馬鹿にするな! 」
俺が叫びながら、即座に轟天を爆龍王ゴウオウの足元に当たる様に気合ともに撃ち込んだ。
轟天の爆発を避ける様に上に羽ばたいた爆龍王ゴウオウは、王宮の屋根をすべて破壊した後に、轟天の爆発の爆風でさらに上に持ち上げられた。
屋根が破壊された王宮の上空で羽ばたく爆龍王ゴウオウ。
その時、何か遠くの方から火箭が爆龍王ゴウオウの方へ飛んだ。
一瞬だが、鋭く。
それは飛びあがった爆竜王ゴウオウをかすめて、さらにはるか向こうに飛び、着弾して直径十キロメートル以上の巨大な大爆発を起こした。
あれ?
何これ?
凄くね?
その大爆発の爆風はグアルダの街を破壊し尽くす。
「な、何これ? 」
物凄い爆風の中、俺がミツキとアオイに向いて聞いた。
「「リヴァイアサンの猛爆攻撃です」」
ミツキとアオイが冷静に答えた。
「え? あいつ強いの? 」
俺が驚いたように皆に聞いた。
「「最強モンスターの一角ですから」」
ミツキとアオイは冷静だ。
サンシュ一世国王とウラカ第一王妃とフレイタス公爵がすんごい顔してる。
向こうの街が消えちゃった。
「何が兄弟だ! リヴァイアサンではないか! 」
爆龍王ゴウオウが叫んだ。
「ぼっちで結ばれた義兄弟だ! 」
横でアポリトがそうだと叫んだ。
「ぼっちだと? 」
「そうだ! 強いばっかりに、たった一人ぼっちで誰も仲間がいなくなったもの同士の堅いぼっち絆で結ばれた義兄弟だ! 」
「え? 」
爆龍王ゴウオウが驚いた顔をした
「どうした? 」
俺が問う。
「……ひよっとして、俺もぼっちなの? 」
爆龍王ゴウオウがすんごい顔してる。
あ、そうか。
良く考えたら、こいつもぼっちだ。
「そうか、お前も良く考えたらぼっちだな」
横でアポリトが言いながら熱い涙を流してる。
「そうだ、ぼっち同士で争ってどうする! 」
俺が叫んだ。
「やかましい! お前等と一緒にすんじゃねー! 」
爆龍王ゴウオウが動揺しながら叫んだ。
「今から、ワシの最大の攻撃ですべてを灰にしてやる! まずはリヴァイアサンからだ! 」
爆龍王ゴウオウが翼を数倍の広さに広げた。
それがすべて赤い火炎に包まれる。
まずい、リヴァイアは海の怪物だ。
恐らく猛爆攻撃の為に、陸に上がってるはず。
足が遅いから、すぐには逃げ切れない。
リヴァイアを救わなければ!
強く強くそれを思った。
目の前に燃えさかる守護神、不動明王が現われる。
[お前に力を貸そう。お前の鎧にお前だけが出来る、真の力を目覚めさせる]
そう思った時に、突然、右手の紋章から出たあらゆる植物のツタやそれらが俺に絡み付いた。
全身を凄いスピードで覆って行く。
そして、それは五メートル近い身体になった。
そして、それに不動明王の炎が拡がり、炎が消えた後、黒光りする装甲になった。
ドラゴンをイメージするかの身体だ。
まるでパワードスーツのように見える。
そして、俺はその巨体の真ん中にいた。
何これ?
良く分かんないけど、とにかくリヴァイアサンを守らないと。
その俺のドラゴン型の身体が翼を広げた。
「リヴァイアはやらせない! 」
俺が叫んだ。
突然、爆龍王ゴウオウが攻撃をやめた。
「聖樹装兵だと? しかも、オリジナルタイプか! 」
爆龍王ゴウオウが驚いたように言った。
「貴様、<終末の子>か……」
爆龍王ゴウオウが今まで見せた事の無い驚きの顔をした。
ミツキが横でその言葉に返事をするように頷いた。
「そうか、すべての事が始ったのだな、そうか……」
爆龍王ゴウオウが何故か満足そうに頷く。
「よかろう! リヴァイアサンと<終末の子>よ! この戦いは収めよう! 」
爆龍王ゴウオウが叫んだ。
「<終末の子>よ。あらゆるものの王たるものよ。いずれ、わしを従えさせて見せよ」
爆龍王ゴウオウが俺を見た。
「待つんだ、ぼっち王」
思わず、俺が叫んだら本音が出た。
いけね。
言ってしまった。
「ぼっちじゃないから! 」
爆龍王ゴウオウが叫んだ。
「待つんだ同志よ! 」
アポリトも叫ぶ
そして、リヴァイアサンも同じように爆龍王ゴウオウに言ったようだ。
「やかましいわ! ぼっちじゃないから! 」
すんごい顔して爆龍王ゴウオウが飛び去っていく。
「仲間じゃないか! 」
「五月蠅い! 」
爆龍王ゴウオウが怒鳴りながら去っていく。
「ちっ、恥ずかしがり屋さんだな」
「ぽっち同士で恥ずかしがることないのになぁ」
「本当ですね」
アオイもミツキもムラサキも頷いた。
ただ、サンシュ一世国王とウラカ第一王妃とフレイタス公爵が破壊し尽くされた王宮の真ん中で、俺達のそのやりとりをすんごい顔して見てた。