第四十二部 第十七章 許嫁のじゃれ合い
「はっ、そう言えば、原潜もあったんじゃないの? 」
母さんの動揺がハンパ無い。
「いえ、爆龍王ゴウオウが攻めてくる前に、スコット中佐からの提言で、皆で一旦海に出ているそうです」
護衛の軍人さんが答えた。
母さんがホッとした。
さすが、スコット中佐、敵襲かどうか分からないので混乱を避けて一旦散開して逃げるとは並みのベテランではない。
実は、実際の戦場でも、優秀なベテランになればなるほど危機回避能力が高く、ああ、これは負けるなっと思ったら、さっさと部隊を置いて逃げちゃうらしい。
まあ、そう言う事しないと、そりゃ長生きしないわな。
たから、ベテランだからと言って凄い戦うと言うものでもないそうな。
「で、スコット中佐は? 」
「はい、皆で様子見をするそうです」
「は? 」
母さんが唖然としてる。
むう、流石だ。
「流石だ。長い間、一緒に居ただけはある。息子の許嫁の喧嘩に巻き込まれたら、命がいくつあっても足りないからな」
親父がうんうんと頷いた。
口に出すとはアホや。
母さんが親父の顔面にプロレスラー蝶野のヤクザキックをかます。
「それじゃ、どうすんのよっ! 」
「母さん、良く考えるんだ。獅子のじゃれ合いは本人達にとっては遊びでも、それに関わる飼育員さんには命がけなんだぞ」
親父が反論した。
「分かった。じゃあ、とりあえず、リヴァイアに猛爆攻撃させて終わらすね」
ミツキが凄い笑顔で答えた。
「いやいや、全部この辺が消滅するって言ってたじゃん! 」
母さんの動揺がハンパ無い。
「いたたたたた! ちょっと、何で? 」
ヨルムンガンドの火炎攻撃とフクロウの羽根攻撃を受けて雪龍さんが悲鳴を上げてる。
その後、強襲型の蒼穹船のビーム攻撃を受けて、雪龍さんが悲鳴を上げて逃げまくる。
「お、バトルロイヤルか? 面白い! 」
それを見てノリノリで爆龍王ゴウオウが辺りに爆炎攻撃を始めた。
「もう怒った! 一番最後に妻になったんだからと我慢してれば良い気になって! こうなったらやってやるわぁぁぁぁ! 」
雪龍さんがブリザードのようなものを口から吐き出してあたりにまき散らす。
あっという間に、それを受けたものが凍る。
でも、それを避けてレイナさん達が雪龍さんが強烈な蹴りを入れる。
「そろそろだな」
俺が腰を押さえて、ゆらりと立ち上がった。
「ああ、俺もそう思う」
親父も同じように立った。
それを見て、腰を押さえて、祝融さんも立った。
「な、何、止めてくれるわけ? 」
母さんがばぁっと嬉しそうに俺達を見た。
「いや、逃げるタイミング」
俺が答えた。
「はぁぁああぁぁぁあああぁぁ? 」
母さんが凄い顔してる。
「いやいや、だって、これからエスカレートしたら逃げそこなうよ? 」
俺が母さんに言った。
「エスカレートって……」
「そろそろ、攻撃のレベルが上がりだすって事さ」
親父が笑った。
「ちょっと、ちょっと、何、この島を捨てる話になってるの? 」
「いや、いつものパターンならこの島は助からないと思うぞ」
俺が母さんに答えた。
「はあああ? 」
「ああ、分かるわ」
「確かに」
カルロス一世とアポリトが頷いた。
「別荘のこちらに脱出用の艦艇がある。今なら、地下通路から行けるぞ」
「お爺様、私が誘導します」
麗が祝融さんに言った。
「あれ? 貴方は参加しないの? 」
母さんが驚いたように麗に言った。
「いやぁ、許嫁どうしのじゃれ合いに参加しても」
麗が笑って答えた。
横で、マリナとかアンナが頷いて笑ってる。
「じゃれ合いなの? あれ? ええええええええええ? 」
母さんが凄い顔をした。




