第四十二部 第十一章 ベトール
そうやって揉めている所に、ベトールが現われた。
髪が女性の様に長い金髪碧眼の痩せ型の金色に輝くオリンピアの天使の一柱だ。
「立てこみ中か? 」
「おお、これはベトール様」
早速、国王が揉み手をするように頭を下げた。
「途中経過を話に来た」
「ははっ、いかがでございましょうか」
「とりあえず、わしは受けよう。それ以外は考え中だそうだ」
「ありがとうございます」
「とりあえず、もう少し説得はしてみよう。ただ、約束は忘れるなよ」
「ははっ、金箔を貼った巨大な神殿を必ずやお作りします。そして、頑張っていただいたベトール様にはさらにもう一段のものを」
「ふふふふふふ、お主も悪よのう」
ベトールが悪代官のような顔をした。
「ふふふふ、ベトール様こそ」
国王が待っていた答えを貰って嬉しそうだ。
ジャパニーズスタイルだな。
「まあ、今の悪よのうは冗談だが、それなら良かろう。もう少し、わしは仲間を説得して見るつもりだ。そこの、今はアオイと名乗ってるのだったな。わし等もいい加減長い間の争いで倦んではいるのだ。確かに、恨み骨髄のもいるが、いささか、長すぎたよ」
ベトールがアオイに少し懐かしそうに話した。
意外と冗談とかも言えるらしい。
「お気持ちは分かります」
「それなら、良い。では、また来る」
ベトールが消えた。
辺りがしんと静かになった。
「ち、ちょっと、今のは……」
母さんが凄く驚いてる。
「ええ、オリンピアの上位天使のベトールさんです」
俺が答えた。
「ど、どういう事? 」
「国王が神殿建てるから、味方をしてくれと説得したの 」
「えええええ? 」
母さんが唖然としてる。
「これがヤマトの伝統技、おもてなしの第一秘儀の一つ賄賂ですよ」
国王が胸を張った。
宰相とイジュウイン大公が拍手をした。
母さんが頭を抱える。
「まあ、でも、本音でしょうね。賄賂と言うよりきっかけが欲しい方もいらっしゃるんでしょう。あまりに長い年月が過ぎすぎました」
アオイが深い笑みを浮かべて深い事を言った。
その長い年月と言うのがどのくらいなのかは怖いので聞かない事にする。
「やはり、そのアオイ様はそうなのですか? 」
樹老人が初めてアオイに敬語を使った。
「いつも通りでいいですよ。あまり私はそんなのは気にしてませんし」
アオイが笑う。
カザンザキスさんが少し寂しそうな目でアオイを見た。
「とりあえず、これで一安心ですね」
俺がしれっと正座を解いて立ち上がる。
「そうだな。そう言えば、シュウジ君もユウキ君もちょっと一緒に酒でもどうだ。良い老酒が手に入ったんだ」
しれっと祝融さんも立ち上がる。
「それは良い話ですな」
しれっと親父も立ち上がると部屋から出て行こうとした。
「どこへ行くのかな」
震えるほど冷たい声が背中からした。
母さんだ。
「話は終わって無いんだけど」
母さんが微妙に震えてる。
何と言う殺気だ。
すぐに自然に三人で正座で母さんの前に並んだ。
逃げそこなった。
残念。