第四十二部 第一章 プロローグ
「だって、だって、私だって乙女だし」
雪龍さんが騒ぐ。
あれから、母さんが所有してると言う、南の島に軽空母で入った。
巨大な岩山の中がくりぬかれて、そこにかなりの艦船を収容できるようになっているようだ。
親父が昔乗っていたパワードスーツを着た護衛兵が見守る中、島の中央の大きな屋敷に入る。
母さんの別荘らしい。
別荘と言っても、あちらの世界のヤマトの王城より余程でかい。
ヤマトの国王が対抗意識から、王城をでかくすると騒いで五月蠅かった。
流石、成金である。
で、今、小学校の校庭みたいな広さの迎賓室で話し合いが始まった。
ソファーがでかくてフカフカだ。
それで、国王がまた対抗意識燃やして、もっとでかいのにするとだいぶ向こうで騒いでる。
調度も物凄くヤマトの王宮より間違いなく上だ。
しかし、冷静に考えてみれば、うちの家計は普通の家並みだったのだが……ううむ、親父の考えとは言え、少しは贅沢したかったな。
話し合いと言う事で、母さんの大きな肘かけつきのソファーを中心に縦長に左右に分かれて座った。
本来の形で言えば上座は国王やアオイなのだろうが、家族としての話と言う事でこうなった。
勿論、俺と親父とミツキは注意の対象として母さんに一番近く、アオイは俺の横に座った。
チアンウェイは憧れの人に近づきにくいらしくて、柱の陰で覗いてる。
そんな中、母さんが腹に据えかねてたのか、最初に雪龍さんを近くの俺の横の横くらいのソファーに座らせて問いただしたら、雪龍さんが冒頭のように答えたのだった。
「何万歳もの乙女がいますか? 」
母さんが呆れたように突っ込む。
「その子、百万歳超えてるよ? 」
ゼブが雪龍さんの横で笑った。
笑えません。
胃が痛い。
ダグダ師匠の顔が凄い。
「そ、そんな、主殿。それを言ったら貴方なんか私の……」
「はい、禁忌」
ゼブが止めた。
「婆専だよね」
「婆専だな」
クニヒト大佐とカルロス一世が向こうの方で囁き合う。
くくっ、馬鹿にしやがって。
「うちの修羅の主さんなんて大したこと無いんですね」
ヨシアキ大佐が嬉しそうだ。
何で、そうなる。
深雪とさくらは母さんがそれなりの人物と言うか政治家を通して話をしてあったそうで、和真と一緒に今日は家に帰る事になって出て行った。
さっきの件もあるので、恋と紅葉とカガがついて行くことになった。
何かあれば魔族のテレパシーでゼブさんが応援にすぐ行くそうな。
一応、それとは別で母さんの部下も一個小隊単位でそれぞれに護衛をつけるらしい。
「シャーロットとかエレナとかアナスタシアは良いの? 」
俺が二人に聞いた。
「ああ、私達はこちらに両親が来るようになってますんで」
シャーロットが代表して笑顔で答えた。
「ちゃんと、皆に謝るのよ。一夫多妻なんて、こちらでは許される話では無いのよ」
母さんがじろりと俺を睨んだ。
胃が痛い。
「とりあえず、まだまだ増えると思いますよ」
アオイが笑った。
「それはアオイ様。ドラゴネットとか鳥とか混ざってるんでしょうか? 」
母さんが敬語で話しながらも辛辣な話なんで、胃痛が止まらない。
「いえいえ、入りませんよ。でも、これからですよ増えるのは」
アオイがにこっと笑って、親指立てる。
どこのおっさん何だか。
母さんも胃が痛いみたいだ。
「どうすんだお前。そんなに増やして」
カルロス一世が凄い顔して囁いた。
「いや、俺の主導じゃないし」
俺が囁き返す。
「結局、私ごときが止めれる話じゃないんですよね? 」
母さんがため息ついた。
警備の軍人さんから、母さんの私ごとき発言で軽いどよめきが起こる。
「始まってるんで、止まらないと思います」
アオイが笑顔で答えた。
むう、胃が痛い。
本当に痛い。




