第四十一部 第八章 黒いもの
俺と親父が壁の人型の墨のようなコールタールのようなドロドロしたものをじっと見てる。
親父も嫌な気配を感じてたのか、身構えてる。
しかし、白い装束で身構えてるのを見ると、時代劇で侍が身構えてるみたいだな。
「こ、これは、一体、何なんだ? 」
祝融さんが壁にべっとりとついた物を見て、これまた身構えた。
「ちょっと待ってください。どういう事です? 」
今まで窓に張り付いてた国王達が走ってやって来た。
「南の島って……秋葉原はどうなるんですか! 」
国王の魂の叫びが響く。
そっちかい!
予想を外さないと言うか。
「いや、実は俺も気になってたんだ」
親父が身構えながら言った。
「それは別に今度でいいんじゃないの? 」
ミツキも身構えながら、親父に突っ込む。
「しかしな。母ちゃんの説教受けたり制裁されるとして、楽しみが俺にはそれしか無いんだ」
親父が正直すぎる。
しかも、言いながら、横に足の裏で蹴りだすような回し蹴りをした。
また、壁にびちゃりと人間の形で墨というかドロドロのコールタールのようなものがつく。
「凄いですね。相手が出現する所を読めるんですね」
ゼブがフライドポテトを袋からつまんで食べながら笑った。
「あ、一体、どこにフライドポテトが」
「調理場に行ったら、これをくださいました」
どこへ行ってるんだ、一体。
「相手って、何だ? これ? 」
「多分、この黒いドロドロからすると、四十六諸侯の中の造反組のものですね」
ゼブが笑って親父に答えた。
「何だって? 」
祝融さんの驚きがハンパ無い。
「四十六諸侯ぉぉぉぉぉおおお様ぁぁぁぁぁああ! ごめんなさいぃいぃぃ! 」
親父がすぐその場で土下座した。
「な、何やってんの? 」
「馬鹿っ! 勝てない相手にはすぐ謝らんといかんぞ! 」
親父が俺に諭すように呟く。
「なるほどな」
俺も即座に土下座した。
「よし、ここは、ヤマトの心意気を見せる時だな」
国王と宰相とイジュウイン大公も土下座した。
「諦めるのっ、早っ! 」
祝融さんが衝撃を受けている。
「いや、上位天使と拮抗する四十六諸侯ですよ! 我々のようなこの次元の神族とはレベルが違う! 」
「いや、それはそうなんだが、戦えなかったものがこちらの神族側で全くいなかったわけでも無いし、諦めが早すぎないか? ショウジ君」
「いや、うちの母ちゃんより強いんでしょ」
「むう、説得力あるな」
祝融さんが困ったような顔をした。
「何? 上位天使って? 四十六諸侯って何? 何で、そんな大層な話になってるの? 」
ガリガリに痩せた和真が聞いてきた。
「いや、うちの息子の前世だかの絡みで、とんでもない連中がこないだから関わって来ててな」
親父が言うと、それを聞いた軍人さん達がどよめく。
後で聞くと上位天使だの四十六諸侯だのは、もう話にならんくらいヤバイ話らしい。
「いやいや、どれだけトラブルメーカー何だよ! どんだけ皆を巻き込むんだよ! 」
和真の魂の叫びが胃にくる。
胃が痛い。
和真の横で、何度も大人しく頷いてるカルロス一世もむかつく。
しかたあるまい。
あれしか無いな。
「だって、にんげんだもの」
思わず、懐かしのフレーズで答えた俺だった。
 




