第五部 第六章 ペドロ王太子
王宮の一角にあるペトロ王太子の離宮の豪奢な一室で、ペドロ王太子がうろうろしてる。
やや長身であるが痩せ気味の身体で、神経質なのか、しきりに爪を噛んでいる。
「まだ、連絡は無いのか? 」
いらいらと歩く所へ、少し背の低い小太りの男が部屋へ入ってきた。
ヘドロ王太子の側近を自任するロドリゲス伯爵だ。
「どうやら、あのパドリアの男たちは釈放され、さらに、国王陛下がお呼びになり詫びをするそうです」
「なぜ、そんな詫びをしなければならないのだ! 」
ペドロ王太子が叫んだ。
「パドリアのカザンザキス殿との関係でございましょう。さらに、ヤマトとも関係が深い様子なので」
「馬鹿な。あのまま、奴らの弱みを握れば、パドリアを制する事も出来るだろうに。そもそも、あの小国を父上は大事にしすぎるのだ」
ペドロ王太子は悔しそうだ。
「はっ、王太子殿下のお気持ちは良くわかります。このロドリゲスも、諸島国家を支配してたテーラが、あのような連中に甘く見られるのは悔しく思います」
「で、あろうが。あのような国から父上が第二王妃を娶るなど、お爺様の判断ミスとしか思えない」
ペドロ王太子が吐き捨てる様な顔をした。
「実は我らが黒幕と分かるとまずいので、ペドロ王太子様のお母上様のウラカ第一王妃様の女官を通して、警吏どもに彼らの拘束と取り調べをやらせておりました。ところが、警吏どもが勝手に相手を間違えたと釈放したそうなので女官がそれを叱責すると、中々口の堅かった警吏の一人が、あ奴らがアレクシアが滅ぶのに関わってたのでは無いかと漏らしたようで」
ロドリゲス伯爵が憂うような顔をした。
「何だと、救世主の一派だと言うのか? 」
「はっ、ヤマトの王族もいますし、可能性はあるかと」
「まさか、テーラを滅ぼして、諸島国家の盟主の座を奪おうと言うのか」
「分かりませぬが、有り得ぬことでは無いかと」
「そうか、それで合点が言った。その為にマリナ第二王妃が産んだ弟のアルフォソをパトリダの五大家族のファミリアのテオトキス家に養子にやる話が動いてるのだ。もう、テーラはいらないと言う事だな」
「な、なんですと! 」
ロドリゲス伯爵が驚いた。
「パトリダの連中は許せん。だが、一体どうすればいいのだ」
「実はもし、彼らが救世主の関係者ならば、良い考えがあるのですが……」
「良い考えとは? 」
「実は救世主に騙されたものがこちらに来ているのです」
「何だと! 」
「うまく利用できれば、彼らを滅ぼすことが出来ると思います」
「分かった。任せよう。たが、間に合うのか」
「はい。必ず、間に合わせてみせます」
ロドリゲス伯爵がペドロ王太子の目をじっと見た。
「よし、任せるぞ」
ペドロ王太子がロドリゲス伯爵に言った。