第五部 第五章 フレイタス公爵
警吏達が帰った後、急いで荷物をまとめた。
第一王妃のウラカ様の下の馬鹿がやってるなら、こんなの暴走するかもしれないし。
普通は大貴族なら、その後考えるし、そういう教育は娘を国王に嫁に出すくらいだからしてるはず。
今回の件はあり得なさすぎる。
裏を返せば、どう動くか分からない。
まあ、警吏も実際、判断力があった為に、ちゃんと理解してくれたが、結構綱渡りな話だったわけだから、これでまたなんかされたらお話にならない。
まあ、逆に言うとそれだけの判断力があるので、今後の警吏の皆さんとのお付き合いもメリットがあるだろう。
警棒でウリウリされたけど。
それよりもだ。
ヤマトの血筋と言うべきか。
妹のミツキとアオイがやばい。
やばすぎる。
本気でテーラを灰にするつもりだったな。
ヤマトの国王だったら、俺に恩を売るチャンスだから、全艦隊向けて来るぞ。
正直、シーサーペントとワイバーンとリヴァイアサンで余裕で灰に出来るし。
過激すぎる。
商人にジョブチェンジしたのに、今度はテーラを灰にしましたとか言ったら、いくらなんでも、商人の未来も消えてしまう。
これはいけない。
どちらかと言うと、ミツキとアオイの方がやばい。
慌てて、荷物をまとめパトリダの外務部にカザンザキスさんからの紹介状を渡し、テーラの入国許可証を貰ったので、急いでテーラを出国するつもりだ。
「良かった。 釈放されてたのですね」
なんか、貴族っぽい騎士の人が数十人の騎士をつれて、目の前にいる。
長身で貴族然として、いかにも育ちが良さそうだ。
俺より少し年上だろうか?
それも、美形だし。
あまり、仲良くしたくない奴だな。
「あ、いや……」
どう言おうか迷ってたら、ムラサキが嬉しそうに横で頷いた。
「私、国王と第一王妃のウラカ様の命令でまいりました。マルティン・デ・フレイタスと申します」
「あ、う、商人のコゴロウと申します」
仕方ないので挨拶した。
「兄弟。国王の最側近のフレイタス公爵だ」
アポリトが声を潜めた。
「ご丁寧にありがとうございます。無事に釈放されたので、国王にどうかよろしくお伝えくださいませ。我々は急いでいるのでこれで……」
深く頭を下げると何とかこの場から去ろうとした。
やばい。
なんだろう。
俺のぼっちの勘が警報を鳴らす。
「お待ちください。貴方はカザンザキス殿のお孫さんと結婚されるとも聞いております。このままお返ししては、サンシュ一世国王の面子にも関わります」
「どうする兄弟」
アポリトが小声で聞いてきた。
「すんごい嫌な予感しかしない」
俺が小声で答えた。
「実は俺もだ」
アポリトも不安そうな顔をしている。
「待ってください。これは貴方方に危害を加えるためでありません。国王様と第一王妃が一言詫びをと申しておられるのです。もし、間違いでもあれば、私が命をかけて阻止してみせます。さらに、パトリダの外務部の方も一緒にお連れするように言われてますので……」
フレイタス公爵が必死だ。
外交問題になりかねない話なので、それは分かる。
分かるんだが。
これに応じると人生が変わるような気がする。
どうしょう。
「いや、身の安全は心配してないのですが……。とにかく急いでますので」
俺が答えた。
「兄弟」
アポリトが小声で聞いてきた。
「別の意味でやばいような気がする。スキル索敵を使ってるわけでは無いが」
「そうか。実は俺もだ。兄弟。嫌な予感がする」
「アオイ殿。アオイ殿は昔、陛下のお供でカザンザキス様の邸宅に行った時に、お会いしたことがありますよね。どうか、このテーラの為に、コゴロウ殿を説得してくださいませんか」
「ええ? お会いした事あるの? 」
俺が聞くとアオイが頷いた。
これは、断れないか……。
「……わかりました。一緒に参りましょう。但し、すぐにヤマトに行かなければならないので」
仕方なしに俺が答えた。
「ありがとうございます。感謝いたします」
フレイタス公爵が喜んで言った。
でも、マジで嫌な予感が止まらいない。
どうしょう。