第四十部 第三章 龍の血を引く勇者のパパ
とりあえず、サラマンダーさんとドラゴネットさんとワイバーンさんのメスとの握手会の間に、使えそうな船は全部ガムビエルに海に運んでもらってる。
握手するたびに、モンスター達の妙な体液が飛び散るので、コンチュエの兵士さん達の目が凄い。
ああ、パトリダ除くと唯一俺の評価が高かった国なのに、もう終わりだ。
時々、嫌がらせのようにオスのワイバーンが上を飛ぶのだが、しんどい。
近くの建物の壁の陰から覗いてるドラゴネットとサラマンダーのオスの目が痛い。
「そろそろ考えた方が良くないか? 」
樹老人さんが俺の横に来て囁く。
「考えたいのですが……」
俺が困ったように囁いた。
「でも、握手会とかしないと襲われるかもしれませんよ」
アオイが小声で囁いてきた。
どんな無理ゲー。
「わし、天界行ったら、何でああなっちゃったんだって凄い言われるのだが」
樹老人が目をうるうるさせて俺を見る。
「それは私が聞きたい」
俺も目をうるうるさせて答えた。
「やはり、男に行きますか」
精霊のボケが横に現われて余計な事言う。
「ふざけんな」
「ここは発想の転換ですよ」
「転換になってねーだろ」
「……頼むから、わしが天界で嫌味まみれで言われた事を思い出して、わしの心に悪いからやめて……」
そしたら、ダクダ師匠が凄い顔して走ってきた。
「ど、どうしたんです? 」
嫌な予感はするけど、とりあえず聞いた。
「あのババァとやっちゃったの? 」
ダグダ師匠の言葉遣いが酷いままだ。
相当動揺してるようだ、顔の歪み方がハンパ無い。
どう言おうかと思ったら、アオイが頷いた。
「ええええ? 人間型になってたなら子供が出来るよ。本当に出来ちゃうよ」
ダグダ師匠が目を丸くした。
もう、俺も息を絶え絶えとさせている。
どこまで行くんだ、この人生。
龍の血を引く勇者のパパになる事が、こんなにつらいなんて。
どこのファンタジー世界の話でも、陰で勇者のパパはこんなに大変だとやって無かったのに。
勇者がチートっぽく龍の血を引いてると言う陰には泣いてるパパがいるんだよ。
「すいませんが、私の大切な旦那様に余計な事を言うのを止めてくれませんか」
雪龍さんが来て、ダグダ師匠にキレてる。
その後ろには龍女さんもいる。
「いや、今なら間に合うかもしれないじゃないですか! 」
ダグダ師匠が俺をじっと見て叫ぶ。
「なぜ、お前はそんなに私の婿取りに反対するのだ」
雪龍さんが凄い顔して怒ってる。
美人なだけに、結構怖い。
「だって、私は<終末の子>と龍女さんの為に数千年を眠ってやって来たのに、ババアの為に眠ったんじゃないもの」
ダグダ師匠が凄い事を言う。
聞いてて、さらに胃が痛くなってきた。
「まあ、でも、開通してしまったしのう」
横で龍女さんが遠くを見るような目で言った。
あの龍女さんが黄昏ている。
考えてみれば、自分が産まれた頃に、すでに長老格だった婆様が自分の旦那とくっついたら嫌だろうなぁ。
「ぐはっ」
樹老人さんがまるで血のようなものを吐いた。
そのやりとりをじっと見てたコンチュエの兵士さん達の目が凄い。
何と言う現実。
早くコンチュエを出よう。
せつない。