第五部 第四章 釈放
「あれ? もう帰ってきたんですか? 」
アオイが凄く驚いてる。
俺達を乗せた警吏の馬車がパトリダの外務部まで戻って来た。
「ああ、話がおかしいのを説明したら分かってくれたんだ」
「申し訳ありませんでした」
俺達を連れてきた警吏が頭を下げた。
「普通はそんなの知るかで拷問パターンですよね」
ムラサキが凄い怖い事を言った。
「いやでも、おかしいだろ。確か、第一王妃のウラカ様の実家ってこの国の大貴族出身だろ? 普通、国内問題である話をワザワザ他国の奴まで拘束してやる? いくら、第二王妃の実家と言っても外交問題になるし、それで息子が国王になって、その後どうするのよ。他国の評価が激落ちして国が危うくなるし」
俺が答えた。
「まあ、そうですね。大貴族ならそのあたりは理解してるはずです」
アオイも頷く。
「そもそも、第一王妃で長男で普通に国王だろ? リスク犯す意味ある? そりゃ、第一王妃が他国出身で第二王妃も他国出身で他国同士の代理戦争ならあるけど、こんなの間違いなく、第一王妃の下の奴が暴走してるだけじゃん」
「いやいや、言われてみれば、命令系統がおかしかったですし、私もその……昇進とかちらついて目がくらんでたかもしれません。何だか、目が覚めた感じです」
警吏達が頭を下げた。
「貴方がおっしゃった通り、上には別人を捕まえてしまいました。間違えましたと伝えておきます」
「お願いします。お金入れたカバンある? 」
警吏に返事した後に、ムラサキに向いて聞く。
「はい」
ムラサキが返事した。
カバンをあけて、金貨の入ってた革袋を一つ警吏に渡した。
「とりあえず、どの辺が動いたか分かりませんが、しばらくは左遷とかあるでしょう。謹慎もあるかも。これを皆さんで分けて凌いでください。必ず、貴方方の事はカザンザキスさんとヤマトのお偉いさんを通して、昇進できるようにします。また、後日、改めて、お礼のお金も渡しましょう。ただし、今渡したお金は必ず平等に配ってください。分け方の不満が仲間で出ると、思わぬことになるかもしれませんから」
「いいんですか? 」
警吏が驚いてる。
「ええ。そのかわり、これは内緒ですよ。その後で貴方方が偉くなった後も良いお付き合いをお願いします。こちらでも、いずれ事業展開するつもりなんで」
俺が頭を下げた。
「すっかり、商人だね」
ミツキがため息をついた。
「いいじゃないか、俺はおぬしも悪よのうって言われてみたい」
目をキラキラさせて言ったらミツキに呆れた顔をされた。
「いつか、屋号は越後屋にしょう」
俺が笑った。
「兄弟。越後屋ってなんだ? 」
アポルトが不思議そうだ。
「あちらの世界で悪商人のステータスみたいな屋号なんだ」
「ほう。そうなのか」
アポルトが興味深げに頷いた。
まあ、本当はテレビの時代劇の中の話だけどな。
「はあ、全くしょうも無い事ばっかり言ってんのね。とりあえず、すぐ止めるわ。ヤマトとパトリダに一番早いモンスターのスカイフィッシュで連絡を送ったんだけど」
ミツキがため息をついた。
「あ、早く止めて。ヤマトは困る」
「はいはい、せっかく、ヤマトとアサナトに艦隊出して貰うつもりだったのに」
「あ、私も止めますね。シーサーペント千匹とワイバーン百匹と貴方の義兄弟のレヴァィアさんにこちらに向かって貰ってたんです」
「は、何で? 」
「「テーラを灰にする為に」」
アオイとミツキが同時に言った。
警吏が唖然として持っていた金貨が入ってる革袋を落とした。
「なんで、そんな過激なの? 」
「いや、普通するでしょ」
ミツキが当然のような顔をした。
「ですよね」
アオイも笑顔で答えた。
「君らやばくね」
俺がドン引いた。
「だってヤマトの王族ですもの」
アオイが笑顔で言った。
また、カザンザキスさんが泣くぞ。
「最近、全然戦ってないですよね。アレクシアの時くらいじゃないですか」
ムラサキも不満そうだ。
「ちょっとちょっと! ムラサキ! 何を言っちゃってんの? 」
アレクシアなんて名前出すから慌てた。
「アレクシアって……」
警吏が凄い顔してる。
「いや、何でも無いですから」
俺が必死に手を振った。
勘弁してくれ。