第三十八部 第四章 ケツ桜
「ケツ桜? 」
俺が親父に聞いた。
「ああ、昔、俺がガキの時、貧民街で遊んでた友達が殺された話をしただろ」
「あったね」
「あん時にさ、ちょうど隣国の王と王子がお忍びで来ててな。何とか逃げ出した友達がその宿泊所に助けを求めたんだ。そしたら、こいつの親父が汚らしいから斬れって言って殺したらしくて」
「ええ、そうなの? 」
俺がヨシアキ大佐を見た。
「ああ、有り得ますね。身分の差は絶対ですし、貧民窟の人間なんて人間扱いされませんし、やばい病気を持ってる事もありますから」
「だからさ、当時、まだ九歳の子供だったし、ガキだったんだよな。それが許せなくて」
「それで? 」
「お忍びの宿舎に行って、全部護衛の奴をでかい石で殴って倒して、王と王子をひっくり返して、鉄線でグルグル巻きにして、ケツ出して、生け花みたいに桜の枝を肛門に突き刺したの」
親父が笑いながら言った。
「それは、通ですね」
ルイス中尉が感心したように答えた。
「わびさびだね」
俺が笑顔で答えた。
「ちょっと、ちょっと、元々仲の良かったヤマトに対して、アレクシアが三十年くらい前に急に敵対心強めて敵国になった事があるんですが……」
ヨシアキ大佐が凄い顔してる。
「まあ、若気の至りって奴だ」
親父が良い笑顔だ。
「ちょい悪親父みたいだな」
「そうか……」
親父が俺に言われて照れくさそうに笑った。
「どこが、良い話なの? ねぇ、どこが良い話なの? 」
クニヒト大佐の突込みが凄い。
外にいるゾンビ達が凄い泣いている。
「それはいけない。いくら友人を殺されて許せないとしても武人としての誇りを踏みにじる行為ですよ」
カザンザキスさんが珍しく声を荒げた。
「すまんなぁ。まあ、九歳だからな。そういうの分かんなかったからな」
親父が困ったように答えた。
「いや、分かんなくても普通はしないでしょ」
クニヒト大佐がつらに突っ込む。
「子供の時のいたずらって、年食ってみると馬鹿な話が多いしな」
親父が屈託のない笑顔を浮かべた。
「つまり、それの報復で友好国のアレクシアが敵国になったって事ですか? 」
ヨシアキ大佐が震えてる。
「まあ、あれだ。子供のいたずらにむきになられても困るけどな。当時は友達が殺されて荒んでたし。まあ、オアイコって事で」
親父が頭を掻きながら、片手で祈るように頭を下げた。
それを見て、外のゾンビ達が跪いて号泣してる。
「こ、この親子は……」
カルロス一世が絶句してる。
「いや、叔父さんだって身内だし」
「がぁぁぁぁぁぁぁっ! 」
カルロス一世か歯をむき出しにして威嚇して来た。
困ったもんである。
「……何だ、これ」
アラトロンが凄い顔してる。
「だって、にんげんだもの」
俺が言うと、皆がさらにドン引いた。




