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全部社会が悪いんやっ! 〜ある救世主として召喚された男の話   作者: 平 一悟
人物紹介は470から475のあたりにあります。
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第五部 第三章 取り調べ

 この世界の取り調べを舐めてたわ。


 つーか、取調室じゃなくて、単なる拷問部屋じゃないか。


 鞭とか三角木馬とか水責めの道具とかある。


 鞭は先っぽに金属製の鉤がついてる。


 三角木馬も血がべっとり。


 リアルでやると股が裂けて、二度とまともに歩けなくなるそうだ。


 水責めも身体を反り返らして水を灌ぐ式の台がある。


 え?


 人権無いの?


「たっぷりと時間をかけて、口を割らせてやる」


 警吏が笑顔で言った。


 五人の警吏がこっちをニヤニヤ笑って見てる。


「ちっ、ふざけんじゃねー」


 アポリトがブチ切れてる。


「パトリダのカザンザキスさんからの国王への紹介状もあるのに、こうなるの? 」


 俺が冷静に聞いた。

 

「だから、第一王妃のウラカ様からの命令だと言ってるだろう? 」


 警吏が嘲笑った。


「いや、だから、良く考えろよ。役目は分かった。でも、命令者は国王じゃない。で、俺達はパトリダの重鎮のカサンザキスさんの身内だし紹介状を持ってる。さらに言うと、一緒にいたアオイはカサンザキスさんの孫でもあるが、ヤマトの宰相の娘だ。さらに、ミツキはヤマトの王族だ。つまり、俺はヤマトとも関係が深い」


「だから、なんだ」


 警吏が警棒で笑いながら、俺の頬をウリウリやった。


「良く考えろ。多分、第一王妃のウラカ様に近い人間が命令を出したんだ。それは分かる」


「だから! 何だ! 」


 いらいらとして警吏がキレた。


「何か俺達から、第二王妃の失態とかパトリダの失態を調べてるとして、出なかったらどうするの? 」


「馬鹿じゃねぇの? そんなの関係無いだろ? 」


 警吏が吐き捨てる様に言う。


「だから、良く考えろと言ってる。パトリダの重鎮の身内でヤマトと関係の深い重要人物に拷問を掛けるわけだ。俺達が死んだとして、何らかの情報が出たとしても、それは、この件を覆すほどの話なのか? それなりの証拠もいるぞ? その落とし前は誰が付ける? 」


「は? 」


 警吏がびくっとした。


「なるほど、兄弟。分かるわ。つまり、この警吏たちが全責任を被せられると言う事だな」


「そうだ。兄弟。誰かが責任を取らねばならない。とすると警吏が暴走したと言うしかない。何しろ、ここのサンシュ一世とカザンザキスさんは親友だそうじゃないか。命令がサンシュ一世から出てればいいが、この場合は第一王妃のウラカ様から出てると言う。つまり、警吏が暴走したと言いやすい」


「え? 」

 

 警吏達の顔が変わる。


「最初から、君らは捨石だと言う事だ。責任は君らが被るわけだ。しかも、拷問までやってるから、君らの家族にも全部連座する可能性があるぞ。警吏なんて、貴族や王族からすれば、虫けらだろ」


 警吏達が互いに顔を見合す。


「いいか、もう一度言うぞ、お前ら、俺達を拷問したら地獄だ。今回の事もちゃんとやったら褒美をやるとか言われてるだろうが嘘だぞ。お前ら最初から使い捨てだ」


 警吏達が真っ青になる。


「……どうすればいいんだ? 」


 警吏の一人が俺に聞いた。


 よしよし、これでよし。


 相手を冷静に考えさせて、恐怖を煽る。


 こうやって、相手を不安にさせて、心を折る。


 まあ、冷静に状況を考えるだけの判断力が彼らにあって良かった。


 実際、話がおかしいもんな。


 リスクが多すぎる。


「一つは俺達側について、命令を無視して、一緒にパトリダに行く。つまり、俺達が守ってやる」


「待ってくれ、家族もいるんだ」


 警吏の一人が必死だ。


「もう一つは間違いでしたと俺達を釈放する。俺達は見つからないように逃げる。勿論、今回の件でこの場で一番偉い奴の許可がいる。誰なんだ?」


「俺だ」


 俺の頬をウリウリした奴が真っ青になって手を挙げた。


 お前かよ。


「よし分かった。間違いでしたと釈放しろ。その程度なら殺されはしない。言った奴も正当なルートでの逮捕で無いし、いろいろと後ろめたいからな。ただ、左遷とか叱責などの嫌がらせはされるかもしれない。その時はしばらく我慢してくれ。なにしろ、カザンザキスさんとは俺は懇意だし、カザンザキスさんは国王のサンシュ一世と親友だ。ヤマトの方からも口添えする。必ず、全員を俺の恩人として昇進させてやる」


 恐怖に震えた彼らに、釈放した場合の御礼で俺達を見逃すように後押しする。


 まあ、なんとか、これで折れてくれるといいが……。


「本当か! 」


 良かった。


 乗ってくれた。

 

「ああ、約束する。一時は叱責されて酷い事になるかもしれないが、必ず報われるようにしよう。とにかく、急いで間違いだったと出せ」


「分かったけど、なんで急いでるんだ」


 警吏の一人が不思議そうに聞いてきた。


「あのミツキやアオイの様子だと、即座に連絡とって、テーラに正式な抗議が来るだろう。そうなれば、こんな稚拙な手段をした連中だ。俺達も始末されるかもしれんが、お前らも証拠隠滅でやばい」


「ま、マジか」


 警吏が震えた。


「とりあえず、お前らの名前はちゃんと書いて渡せ。必ず報いる。このままだと俺達だけでなく、お前らもやばい。正式な抗議が来る前なら、俺達を間違えたと釈放しても、恐らくお前らの上も大きな話にしないで無かった事にするはずだ。なにしろ、まともなルートの話じゃないからな」


「わ、わかった」


 警吏が慌てて、俺達を釈放させた。


 勿論、彼らの全員の名前は貰っている。

 

「間違えて申し訳ありませんでした。すぐに貴方方を馬車でパトリダの外務部におくります」


 急に警吏の言葉が敬語に変わる。


「あ、馬車出してくれるの? 確かに急いだ方が良いからね」 


 そういって俺達は馬車に乗った。


「兄弟、あいつら、どうするの? 」


 小声でアポリトが聞いた。


「ちゃんと、出世できるように働きかけるし、お金も渡す気だ。だって、これからここでも仕事するかもしれないし、警吏のえらいさんが味方にいたら便利だろ?」


「流石兄弟。なるほどな」


 アポリトが小声で感心した。





 すいません。更新が遅れました。 

 

 なんか、理屈っぽい話書いてたもんで、最後の推敲で頭がこんがらがってきました。


 どっかで、一度改稿するつもりです。


 すいません。


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