第三十七部 第九章 窮地
「ほう、決心が固まったか。なら、一つ良い事を教えてやろう。今、コンチュエの王城ではお前らの世界で言う大陸間弾道弾が並べられて、ヤマトとパトリダとエテルノに向けて核攻撃をする準備が整っている。後、数時間でそれは発射されるだろう。我を倒すなら早い方が良いぞ」
白いオオカミが笑って言った。
「何だと」
親父が少し焦った顔をした。
「核ミサイルをヤマトにだって、家族が……」
メイスン中尉が慌てている。
やはり、始まりはそうでも子供たちは可愛いのだろう。
「チアンウェイ様は何という事を……」
グォクイ将軍が震えてる。
「言って良いですか? 」
精霊さんが肩に現われて聞いた。
「何? 」
「変身は分かりましたけど、変身のイメージってあるんですか? 」
「は? 」
「イメージが出来ないと難しいと思うんですが」
「そういや、変身物ってあまり見てなかったな」
「おいおいおいおい、大丈夫なのか? 」
カルロス一世もエテルノが核攻撃と聞いて落ち着いていないみたいだ。
「思い出せ。胸の前で両腕をクロスさせて<月に代わっておしおきよ! >だ! 」
親父が熱い目で言った。
「え? そっちなん? 」
「え? 変身ベルトじゃないんですか? 」
ルイス中尉が驚いてる。
ベルトなんか無いし。
「ふははははは、一騎打ちをする準備が出来たようだな」
いやいや、出来てないし。
変身ってどうだっけ?
白いオオカミの前に次々と顎が現われる。
物凄い数だ。
百はくだらない。
「あれの全ての連続攻撃が来ますよ」
セブが俺に囁いた。
無茶な。
無茶苦茶でないかい?
「とにかく、変身をイメージしてください。それしか無いです」
精霊も必死だ。
「兄弟、短い人生だったな。お互い」
アポリトがもう諦めてる。
「君と会ってから碌な事が無かったな」
クニヒト大佐も悲しい顔をしてる。
「酷い最期だな」
カルロス一世が静かに笑ってる。
「諦めるしかないんかい! 」
俺が慌てて突っ込んだ。
「前、前、来るぞ」
親父が俺に囁いた。
白いオオカミが数ステップ勢いづけるとこちらに向かって来た。
「さあ、最強の男よ。お前の力を見せてみろ! 」
白いオオカミが絶叫した。
変身……変身……変身……変身……へんしん!
言ってる間にイメージも掴めないまま、相手の巨大な顎が目の前に現れた。
それぞれの牙がまるで杭のようだ。
その時、強く思ったのは何故か逃げる事だ。
アオイのテレポートを映像のように思い出していた。
「ガシィィィィィィィィン」
顎が空を切った。
「何? 」
白いオオカミが辺りを見回した。
イージス艦二隻なだけでなく、使徒ガムビエルとコンチュエの第一艦隊とココドウリロの第一軍団も姿が消えていた。
「テレポートだと? 」
白いオオカミが苦い声で呟いた。