第三十七部 第三章 ヤマトの暴走
「とうとう、ドラゴンのヒモになりました」
この言葉を言った後のカザンザキスさんとダクダ師匠と何より樹老人さんの真っ黒な顔が忘れられません。
「ひょっとして、亜龍族の女性もこうなるのかな」
ダクダ師匠がじっとりとした脂汗でも出てそうな顔で呟いた。
「そもそも、ドラゴネットとはいえ龍種はこの手の精神操作には異常に強い筈で、こんな風になるとは思わなかったんですけどね」
カザンザキスさんの動揺感がハンパ無い。
「ところで、何か分かりましたか? 」
カルロス一世が食堂に来てさわやかに俺と樹老人とかの惨状を無視してカザンザキスさんに話しかけた。
何と言うスルースキル。
「ええ、とりあえず、エテルノにあちらの世界の艦隊が集中してた事で、パトリダは申し訳ないけど無傷でした。ただ、まだ空母とか言う向こうの空飛ぶ機械とやらを運用する船と別で数隻が残っているのと、ちょっとややこしい話も流れてて……」
「ややこしい話? 」
「何か、ヤマトが向こうの世界に艦船の発注をしただのどうのと」
「「「「はあ? 」 」 」
一斉に親父とかヨシアキ大佐とかヤマト出身者が唖然とする。
「何か、捕虜でこちらの世界に住んでいる人間に向こうの世界の兵器会社の息子がいるとかで」
「それは、ブリット少尉の事ですね」
メイスン中尉がフライパンを持って出て来て唖然としてる。
「ヨシアキ大佐は何かご存知で無いですか? 」
カザンザキスさんがヨシアキ大佐をじっと見た。
「いや、何かびっくりさせるような事を近いうちにするからって訳の分かんない事を国王が言ってたのですが」
ヨシアキ大佐が首を振って困ったように答えた。
「ああ、ガチだな 」
親父が笑ってる。
「俺もそう思う。最悪の所で最悪をやるのがあの人達の性格だから」
「いや、お前が言うか? 」
スルーしてたカルロス一世が呆れた顔をした。
「そもそも、向こうの世界と戦争にって話なのに、向こうの世界が武器をこちらに売るってあり得るんですかね? 」
カザンザキスさんがいぶかしげに聞いた。
「いや、だって、腐るほどヤマトは金と銀持ってるもの。こないだ王太子だからって、向こうで国の資料見せられてびっくりしたし。ミーハーだから、こういう事に金とか使うのは躊躇しないでしょ」
「そりゃ、金払いが良ければ、皆、ドンドン売るさ」
俺と親父が肯定する。
「傍から見てると、ひょっとして、あちらの世界とこちらの世界と言う別れ方で無くて、あちらの世界とこちらの世界と組んだグループとあちらの世界とこちらの世界の組んだグループ同士で戦うようになるかもしれないですね」
ダグダ師匠が悩むような表情をした。
「そんな馬鹿な事が起こるのか? 」
樹老人さんが呆れたように皆を見回した。
「いや、すでに、こいつの許嫁が光と闇の上位者やらなんやらでごっちゃの混成部隊だしな」
親父が俺を指差して言った。
「結局、中心にいるのは彼なの? 」
クニヒト大佐が苦々しい顔をした。
悲しい。




