第五部 第二章 テーラ
テーラはパトリダと同じく、貿易と観光国家だ。
首都のグアルダはパトリダより発展してる。
うちでやってるシーサーペントが引っ張る高速艇でグアルダについた。
ここからは、グアルダからの高速帆船に乗り換えて、ヤマトへ行く気だ。
グアルダはなかなか綺麗な街並みで、結構、皆、裕福そうだ。
そんな中、カサンザキスさんの紹介状を持って、グアルダにあるパトリダの外務部の出先機関に顔を出した。
それからテーラの王宮からヤマトへの入国許可証を貰う予定だ。
「やっぱり、群雄割拠してたピラティスがいない分、良く発展したんですかね」
アオイが周りを見回した。
「いや、ここ、実は裏で海賊だった奴が国を作ったの」
アポリトが答えた。
「それは初耳ですね」
「あまり、知られてないからな」
ピラティス最強だったアサナトのトップだっただけあって義兄弟のアポリトはいろいろ知ってるみたいだった。
「ただな、兄弟。いろいろ調べたんだが、ちよっと厄介かもしれんぞ? 」
「へ? 何が? 」
「カザンザキスさんは否定してたし、サンシュ一世国王も関わって無いが、この国の大貴族出身ののウラカ第一王妃とカザンザキスさんの妹のマリナ第二王妃の間がキナ臭いみたいだ」
「へ? どうゆう事? 」
「ウラカ第一王妃の長男のペドロとマリナ第二王妃の二男アフォンソが後継者争いしてるらしい。まあ、正確に言うと周りがだがな」
「でも、それは、第一王妃と第二王妃では格が違うし、何より第二王妃の私の大叔母は外国人ですよ」
アオイが不思議そうだ。
やはり、自国を固めるうえでも、格落ちの第二王妃で外国人の王妃の上に、しかも次男に目があるとは思えない。
パドリダが有力国家なら別だが、やっと、二流国家から一流国家に入れるかもってところだ。
投資で国を発展させようとしてる時に、近隣と刺激を起こしても仕方ないし。
「いや、ペドロがかなり残念な奴らしい。それと、今、急速にパトリダが経済的に大きくなり出してるので、いろいろと閉塞的な環境にあるテーラはそれに乗っかるのを期待してるグループがいるようだ」
アポリトが言った。
「兄弟。嫌な予感するねぇ」
俺がアポリトを見た。
勘違いする奴はどこにでもいると言うことか。
「だから、カザンザキスさんには、すぐにこの国を出れるように、パトリダの外務部でヤマトへの入国関係の書類を全部準備して貰うように頼んである」
「おお、流石だ。兄弟」
と俺が思って返事したのだが、甘かった。
外務部の前にテーラの警吏達が居て、いきなりアポリトが捕まった。
勿論、パトリダの外務部の人間も抗議してるし、アオイも怒った。
だが、アポリトは最近実業家に転身したとは言え、元ピラティスのアサナトの頭領である。
「待ってください。その方はパトリダの貴族ですよ」
アオイが制止した。
「だが、元は海賊だ」
警吏は冷たく答えた。
そして、俺。
「最近、コゴロウとか言って、パトリダでいろいろやってる奴だな」
と警吏が警棒で俺の頬をウリウリしてる。
ミツキとアオイとムラサキは素直にヤマトの入国許可証を出したので手が出せないようだ。
入国許可証にはヤマトでの身分も乗っている。
警吏がそれを見て、悔しそうな顔をしている。
ヤマトって本当に外交関係凄いのね。
国王とか宰相とかあれだけど。
で、俺のが問題だ。
ヤマトの入国許可証は隠し持っててあるが、その名はスメラギ ユウキである為に出すに出せない。
しかも、今見せてるコゴロウの入国許可証はパトリダで作ったので、これを出したのがまずかった。
「コ、コゴロウ? ヤマトの名前なのにパトリダの入国許可証だと? 」
轟天も実はシーサーペントを百匹ほど海で連れてきていて、頑丈に完全防水して、そのうちの一匹に持たしてある。
当然、おれがユウキである事がばれないようにする為だ。
まあ、どちらにしろ出せないけど。
「これは外交問題になりますよ」
パトリダの外務部の人が鋭い目を向けた。
「かまわない。これはウラカ第一王妃様の命令だ」
テーラの警吏は冷たく答えた。
かくして、今度は警吏の取り調べ室に行くことになったのであった。
まさか、商人でこうなるとは……。
俺のジョブチェンジに暗雲が漂うのであった。
ブックマありがとうございます。
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大事な事なんで三回言いました。
本当にうれしいです。
感謝します。
ありがとうございます。