第三十六部 第二章 イージス艦
「何だったんだ、あの凄い手は」
カルロス一世が呆然としている。
「まるで、あちらの世界の鬼のような手だったな」
シュウジが思い出したように呟いた。
ユウキの許嫁達は激昂している。
だが、その中でアオイとミツキは静かだった。
「まさか、突然、あんな手が空中に現われて王太子を攫うとは」
ヨシアキ大佐が身震いしたように答えた。
突然上空に現われた巨大な鬼の手のようなものにユウキが攫われて、すでに一時間がたっている。
レイナさんとアンナさんは上空に飛ばせていたワイバーンを呼ぶとすぐさま乗って辺りを飛びまわっていた。
「私が後をつけられていたのでしょうか」
グォクイ将軍が真っ青だ。
「分かんないが、責任論は置いといて、とりあえずあいつを探さないとな」
シュウジが許嫁達に責められて必死に索敵してるアポリトを見た。
「何で、使徒が動かなかったんだ? 」
クニヒト大佐が首を傾げた。
「良い所に気が付いたな。俺もそう思う。だから、逆に味方側なのかもしれんな」
シュウジがじっとアオイを見て首を傾げた。
「どうかしましたか? 」
「いや、アオイさんが一番激昂しそうなのに、黙ってるからな。ひよっとして、攫った相手を知ってるんじゃないのか? 」
シュウジがアオイをじっと見た。
「はい、その通りです」
アオイがニッコリ笑った。
「やはりか」
親父が頷いたと同時に許嫁達がアオイに殺到した。
「なんで、お姉ちゃん、黙ってるの? 」
アオイの妹のミオが聞いた。
「久しぶりに会いに来たみたいなので、少しは二人きりにさせてあげないと」
アオイがくすりと笑って言った。
「おいおい、じゃあ、レイナさんとか止めないと」
クニヒト大佐が突っ込んだ。
「言う前に飛び出して行きましたから、しょうがないですね」
アオイがくすくす笑った。
許嫁達はそうでも無いけど、シュウジ達が少しぞっとしてる。
「じゃあ、とりあえず、大丈夫と言う事か」
「ええ、もう少ししたら迎えに行くつもりです」
アオイが笑った。
「ど、どうやって? 」
クニヒト大佐が首を傾げた。
「大丈夫です。ユウキ様の身体には私の眷属が埋め込まれておりますから」
さらりと凄い事をアオイが言った。
声に出すと怖いので叫ばなかったもののカルロス一世をはじめシュウジを除く男全員がムンクの叫びの顔になった。




