第三十五部 第六章 白旗
「どう思う? 」
親父が皆に聞いた。
「だまし討ちかな? 」
「理由は? 」
カルロス一世が俺をじっと見た。
「俺ならそうするから」
「むう」
「俺も息子と同意見だな」
「とりあえず、沈めてから話をしようか」
俺が皆を見回した。
「ち、ちょっと待ってください。白旗振ってんでしょ。こっちの世界でも降伏や戦意が無い時に振る旗ですよ」
ヨシアキ大佐が慌てて言った。
「大丈夫、旗は遠くて見えなかったって事で」
俺が凄い良い笑顔で答えた。
「なるほど、悲しい事故と言う訳だな」
「そうか、そう言う事故はありがちだな」
親父とカルロス一世も笑顔だ。
「へ、陛下! ど、どうなさったのですか? 陛下は確かに天才と言われる猛将ですが、そんな道徳に反した事は言わない筈! 」
アリリオさんの動揺が激しい。
「そうだっけ? 」
カルロス一世が首を傾げる。
もはや、昔のカルロス一世では無いと言う事か。
「まさしく、呉下の阿蒙にあらず、士別れて三日ならば、即ち更に刮目して相待つべしと言う事だな」
親父が深く深く頷いた。
「えーと、それは確か向こうの世界での士と言うものは数日でも凄い進歩してると言う事ですよね。これ、進歩ですか? 」
ヨシアキ大佐が顔を歪ませて言った。
「まあ、染まり過ぎだよね」
クニヒト大佐が呆れてる。
カルロス一世が凄い顔してる。
「敵意は感じませんよ。それは旦那様にもおわかりのはず」
いきなり、アオイがテレポートして俺の前に来た。
皆がのけぞってビビってる。
いきなりは心臓に悪い。
「何か相談事があるのでしょう。もし、相手がおかしい様なら、それから沈めるのでも問題無いと思われますが」
アオイがにっこりと笑った。
部屋がしんとなってる。
「あ、皆、ご飯食べてる」
ミツキが食堂を覗き込んで言った。
いつのまにか、許嫁達が甲板に出て来てる。
さらに、許嫁以外の皆が静まり返る。
何でやねん。
うちの許嫁はモンスターか何かですか?
否定できない。
「とりあえず、今、向こうの第一艦隊と比べて圧倒的に強いのはこちらですから、何もお悩みになる事は無いんじゃないでしょうか」
アオイが再度言った。
圧倒的に強いんだ。
まあ、上位天使だのが出て来た時点で、仮面なんぞお話にもならんかもしんないけど。
とりあえず、話し合いをしてみるか。
と思ったら、使徒ガムビエルが前に進みだす。
「いつでも、一気に始末できるポジション取りをするみたいですね」
アオイが笑って言った。
結構、物騒なんだな。
ガムビエルが第一艦隊の背後に回る。
第一艦隊の将兵が必死に白い旗を振ってるようだ。
旗の大きさが変わってる。
びびって適当に白いシーツでも旗代わりにしてるのだろう。
「凄いな。白い旗をあるだけ作って出して、必死で振ってる」
親父が笑った。
「まあ、気持ちは分かりますけどね。あんなデカいのが後ろに回り込まれると気が気じゃないでしょうし」
カルロス一世も言った。
「とりあえず、面白いので、少し様子を見ましょうか」
俺が言ったら、親父とカルロス一世が頷いた。
横で、アリリオさんが凄い顔してる。
カルロス叔父さん、染まり過ぎぃ。