第三十四部 第七章 上位天使フル
「そもそも、大事な許嫁をポケモ〇呼ばわりしないで欲しい」
俺が親父に言った。
親父があたりを見回して、さらに後ろも振り返って念入りに見てる。
そして、ここに居る以外誰もいない事を確認すると驚いたように笑った。
「なんだ。結構ラブラブなんじゃん」
親父が喜んでる。
つまり、俺が許嫁の姿を見て言ったと思ってた訳か。
「当たり前でしょ」
「まあ、正直、可愛くて良い子ばかりだよな。怖いけど」
「怖いって言われると怖くなるからやめて」
「まあ、俺も女媧の母ちゃん愛してるからな。愛は恐怖を乗り越えるものだ」
親父が遠い目をしてる。
「とりあえず、愛の戦士ヒモとしてはちゃんと今の許嫁を幸せにしてだな……」
俺が言うのが途切れた。
なぜなら、目の前に光り輝く女性の天使が金色の羽根を拡げてるからだ。
何で?
「ほう、私の事を忘れたか? 」
そう目の前の天使が言った途端、親父をはじめ全員が後ずさる。
特に、カルロス一世の逃げ足がハンパ無い。
アリリオさんが追っかけて食堂から出てった。
俺もやばいと思って、アオイ達のいる寝室側を見るが起きてくる気配が無い。
「ふむ、心配するな。あちらとは空間を遮断しているから、何がここで起こっても分からんぞ」
その天使が冷やかに笑う。
「オクの奴が先走ってお前の顔を見に来たようだが、私のお前に対する憎悪も奴に勝るとも劣らん」
「ど、どなたなんですか? 」
誰だか全く分かりません。
憎悪って何でしょう。
「ふむ、私はフルと言う。どうやら、まだ思い出して無いようだな」
フルと自分を言う上位天使は俺を見てにやりと笑った。
「正直、何が何だか全然分からないんですが」
と俺が言いつつ、ガムビエルを呼ぶ。
だが、ガムビエルが動く気配が無い。
オクとか言う男の天使の時は先に動いて先制攻撃してくれたのに。
「空間を遮断したと言ったろう。使徒ガムビエルが気が付くわけは無い」
フルが俺の目つきで気がついたのか、本当に殺気立った冷やかな笑いを浮かべる。
そして、俺は親父をはじめ残った仲間達がそろりそろりと見事に食堂を這って出て行く姿を見る。
くっ、皆、逃げる気か!
と言えない、何故なら、俺でも逃げるから。
「まあ、記憶が戻っていようが戻って無かろうが関係無い。私は貴様を嬲り殺しにするだけだ」
フルが氷のように呟いた。
「待ってください。貴方が嬲り殺しにしたい俺の記憶が戻って無いのなら、それは貴方の楽しみが半減してしまうのでは無いでしょうか? 俺に記憶が戻った後に、嬲り殺しにすべきですよ」
俺が笑顔で答えた。
「ふは、ふははは、ふははははははははははは」
フルが笑い始める。
それも、凄い鬼のような顔をして。
こええ。
アオイと同じくらいこええ。
「貴様は覚えてないのだろう。だがな、私は覚えている。ずっと昔に、負傷した貴様を殺そうとした時、貴様は怪我が治ってから戦わないと一騎打ちの意味が無いと同じように私に言った」
フルが俺の胸倉を掴んで笑った。
むう、肉食獣のような笑いだ。
「だがな、貴様はその話を飲んだ私が隙を見せた途端、私を罠にはめてボコボコにしたのだ」
やべぇ、顔が凄い怖い。
何という事でしょう。