第三十三部 第七章 愛の戦士
と言う訳で、七時間後、俺は寝室をそっと出て、青いビニールシートで簡単に補修されてる食堂に戻った。
すでに、辺りは暗くて、シートで覆われた食堂がなんだかシュールだった。
「おお、お帰り」
親父が笑ってる。
クニヒト大佐とかアポリトとかは呆れ顔だ。
横を見ると、固まったままの樹老人さんがいた。
「お前、やりっぱなしだな」
親父が苦笑した。
「とりあえず……愛を確かめ合って来ました」
俺が右手を突きだすとやったと言う感じで答えた。
「そ、それでいいの? 」
クニヒト大佐が突っ込んだ。
「良いんです。俺は愛の戦士だそうだから」
俺が破顔した。
それを聞いた樹老人がびくりとするとその場に崩れ落ちた。
「なんか、昔の宇〇戦艦ヤマトみたいな事言うな」
親父が爆笑してる。
「愛の戦士なら、キューティ〇ハニーでは? 」
ルイス中尉が前のめりだ。
「いや、昔のアニメは全部、愛って言ってりゃいい感じだったからな」
親父が答えた。
「とりあえず、ヒモで頑張ります」
俺が笑顔で答えた。
樹老人が突っ伏して痙攣してる。
「で、ヒモさんはこれからどうすんだ? 」
親父が笑って聞いた。
「とりあえず、カルロス一世に会う。その後の事は皆で相談して決めようと思う」
俺が笑った。
「あの天使、上位者だな」
親父がちょっと真剣な目をして言った。
「上位者? 」
「ああ、神も天使もすべての創造主たる御方の下なのは間違いないが、位に上下がある」
「樹老人さんも母さんも、言わば現世に近い下位者だ。だが、あれは次元の違う上位者だ」
「え? 母さん、下位者なんだ」
「まあ下位者でも百くらい位があって、それの最上位ではあるが、全次元を見る上位者に対して、下位者は各次元の世界を任されてる者だからな」
親父が説明する。
「随分と知ってらっしゃるんですね」
カザンザキスさんが驚いた顔をしてる。
「まあ、創造主のご側近の方に教えてもらったからね」
親父が笑って答えた。
「これは光も闇も同じだ。上位者と下位者では力の格が違う」
親父がじっと俺を見た。
「むう、なるほど、そう言う事か。親父が言いたい事が何となく分かるよ」
俺が何度も頷いた。
「そのとおりだ。流石、我が息子よ理解が早い。お前のヒモの選択は間違って無かったんだよ」
親父がほほ笑んだ。
「「「「「は? 」」」」
まわりが一斉にドン引いた顔をした。
「どういう事です? 」
カザンザキスさんが代表して聞いてきた。
「つまり、下位者と上位者には厳然とした差がある。どう戦っても難しい。はっきり、無理だと言っていい」
親父がビシッて感じで言った。
「だから、恐らく上位者らしいアオイとミツキに頑張って貰えばいいと言う事だね」
俺が笑顔で答えた。
「そのとおりだ。俺達が頑張ったって、どうあがいても無理だから。お前のヒモはそのためのものだったんだ」
親父が皆を見回して断言した。
「おれ、ヒモを選択して良かったよ」
俺が屈託なく笑う。
親父が満足そうに何度も頷いた。
樹老人が横でぴくりとも動かなくなった。




