第三十三部 第一章 プロローグ
目が覚めた。
何故か、俺の頬を涙が流れてる。
変な感じだ。
アオイのテクは凄かったのだが、逆に何故か自分はそれを懐かしいと思った。
何でだろう。
物凄く自分にとって大事なものを忘れてる気がした。
本当に本当に大事なものを……。
いろいろと思い出そうとすると、又、涙が出てくる。
まあ、許嫁の足がまわりで布団から飛びだしてたり、所謂アヘ顔のまま気絶してる許嫁達に囲まれて、考えるような事でも無いが……。
周りの惨状を見れば見るほどやり過ぎちゃった。
頭には許嫁のパンティー被ってるし、最初の俺のモノローグが台無しだ。
おっと、胸にはブラジャーつけてるし。
何でこうなってるのか、ちょっと思い出すのも怖い。
自分のパンツに刀のように差してる電動バイブ見ても、もののあはれを感じる。
どこでこうなっちゃったんだろうか。
結構、シビアな感じの夢も見てたはずなのに。
「とりあえず、毛布だけ掛けて、部屋から出よう」
小声で言いながら、毛布を掛けていくが、何だろう許嫁を見てて切ない。
やべぇ、無茶苦茶お盛んだったんだなぁ。
本当に本当に許嫁達が凄い格好してる。
ただ、隅で普通に寝てるアオイを見てどきりとした。
涙の痕がある。
一体、何が長い間なのか、さっぱり分からない。
とりあえず、悩むのも疲れるので、早めに部屋を出た。
「おう、早いと言えば早いが、それでも六時間ってとこか? 」
会った途端の親父が元気そうだ。
「何だろうな? 俺、何かあるのかな? アオイも変だったし」
「まあ気にするな、悩んだって変わらん」
親父が笑顔だ。
だめだ、余韻が吹っ飛んだ。
まあ、ある意味、そういう生き方って凄いんだろうが。
「うちの母さんもそんな感じだったからな。アオイさんにも何かあるのかもしれんが、それをお前が悩む方が向こうには負担だろうよ」
親父がしみじみとした顔をした。
「意外ですね。そんな風にうちの孫を思ってくださるとは」
親父の後ろにいたカザンザキスさんが驚いた顔をした。
「まあ、俺は一人で友達の敵を討って、王宮の皆に後ろ指刺されて、無理矢理、日本に先に転生させられたからな。こんな俺でもいろいろあるんだ、そりゃ皆、いろいろ持ってるさ。だから、本人が何かお前に言って来たら聞いてあげてやれ」
親父が俺に、又、優しい笑みを浮かべた。
「……私は貴方を誤解してました」
カザンザキスさんが感激したような顔をした。
俺も同意だ。
そうか、親父にもいろいろとあるのか。
「やっぱり、報復しすぎると良くないぞって事だよなぁ」
親父が感慨深い顔をした。
「は? 報復し過ぎって? 」
俺が唖然とした。
「いや、王宮の後ろ指刺して来た奴、全部、修羅の主とくっつけてやったんだわ。凄い悲鳴だったなぁ」
親父が良い笑顔だ。
本当に良い笑顔だ。
感心して損した。
カザンザキスさんの顔が見れない。
やっぱり親父は親父だ。