第三十三部 第八章 ノーハンド・エクスタシー
目の前の雌の塊が痙攣したように海に落ちていく。
鳥もモンスターも痙攣しながら海に落ちていく。
海の中の魚たちも痙攣して浮かんできてる。
そして、すべての雌の鳥とワイパーンなどのモンスター達が下に落ちて目の前にはいなくなった。
「嘘だろ。全部いかせたのか」
親父が愕然とした。
[信じられない]
「ふっ、こんなものだ」
などと格好つけてみたが、何が何だか実は分かってません。
勢いでやってしまった。
「すげぇぞ。お前、動物や鳥ゃモンスターをいかせるなんて、普通のヒモには出来ない事だ」
親父が感動している。
「なぜ、感動? 」
「だって、お前鳥や魚やモンスターだっていく事を証明して見せたんだ。これは凄い科学の発見じゃないか」
「また、意味不明な事を言う」
「いや、考えてみろ。お前、これは金になる能力だぞ」
「むう、それはあるかも」
[ちょっと、ちょっと、何でそっちの方向行くんです。私がやばいんですけど]
「どうしょうかな。わしが責任取っても終わらんくらい事態が悪化してないか。これのどこが<終末の子>なんだ」
樹老人の顔がとんでもなく無表情になってる。
カザンザキスさんとダグダ師匠が樹老人さんを見て同情してる。
「まあ、樹老人さん気にするな。なるようになるだよ」
親父が朗らかに笑った。
相変わらずの親父だ。
「本当に、気にしませんね」
カザンザキスさんが呆れたように親父を見た。
「だって、気にしたって一生、気にしなくったって一生。結果は変わらんでしょ」
「うわぁ、凄い考え方」
ダグダ師匠が呆れ果てて逆に感心しているようだ。
「だって、どうしたって、こいつが進む方向決めてんだから、まわりがどうこうできる問題じゃないし」
親父が俺を指差した。
「いや、でも、貴方が育てたんでしょ。親としてはどう思ってるんですか」
カザンザキスさんが本当に呆れ気味だ。
ちょっと、言い方酷い。
「寝る子は育つ! 」
親父がバーンって感じで叫んだ。
「「「は? 」」」
カザンザキスさん達が唖然としてる。
「そこを大切に育ててみました」
親父がにやりと笑った。
駄目だ、こりゃ。
何言ってんだか、分かんない。
そのせいでカザンザキスさん達もどう返していいか分からないで黙ってしまった。
親父のいつもの手だ。
こうやって場を誤魔化すのだ。
「あ? アマゾネス達が近づいて来てるって」
俺が親父に言った。
「目が赤くなったから、ガムビエルさんからか」
「うん」
「よし、やってしまえ! ノーハンド・エクスタシーの出番だ」
と親父が叫んだ。
酷いネーミングセンスだ。
しかも、なぜ、英語。
本当に涙が出そう。




