第三十三部 第六章 天界の英雄譚
「昔、天界で馬鹿な事ばっかりやって追放された御方ですよ」
精霊の入ったクニヒト大佐が嬉しそうに笑った。
「え? 言っちゃうの? 」
樹老人が驚く。
「だって、有名ですよ。まあ、実際は奇策が得意で天才的な人だったみたいですが、本当は仲間を庇って追放されたらしいんですよ。それでも、光と闇が戦う時に戻って来て、自分の身を犠牲にして皆の滅びを止めた大英雄ですよ」
精霊の入ったクニヒト大佐が胸を張った。
まるで自分の自慢話をしてるようだ。
「何で、胸を張るの? 」
流石に気になったので聞いてしまった。
「私のご先祖が、その御方とともに戦ったそうなんですよ。皆の大英雄ですよ」
精霊の入ったクニヒト大佐が本当に誇らしげで嬉しそうだ。
「でも、変態じゃん」
「いや、視野が普通の人と違うだけだ。実際、信じがたい奇策で敵を何度も破ってるし」
樹老人が俺の言葉を否定するように首を振った。
「でも、変態じゃん」
俺が再度言った。
「あの御方に、そんな失礼な事を言うなら、貴方をもっと変態にしてやりますよ」
精霊の入ったクニヒト大佐が激怒した。
「自分達の大英雄だからって、庇っちゃ駄目なんじゃないの? 」
「何言ってんですか。敵だった闇の世界にも信奉者がいるくらい、凄い御方なんですよ」
「なんか、良く分からんな」
「まあ、でも、追放されたのにも関わらず、戻って来て皆を救ったなら、ヒーローだな」
親父が納得したような顔をした。
「まあ、そりゃ、そうだけど」
「とりあえず、すべてを変態にすれば、それは普通と言う事か。すげぇな。いっちょ、世界を変態まみれにしてみるか」
親父が破顔した。
「良いですね。リアル腐を目指しましょう」
精霊の入ったクニヒト大佐も満面の笑顔だ。
「えええええ? 」
樹老人が困った顔をした。
カザンザキスさんだけでなくダクダ師匠まで頭を抱えてる。
「大丈夫ですよ。本当にこの人特別みたいなんで。かっちょいい男とかっちょいい男がいちゃいちゃする世界を作りましょう! 」
精霊の入ったクニヒト大佐が手を突き上げて叫んだ。
「却下」
俺が言うと、無視してイージス艦の舳先の方へ行った。
「ええええええ? 」
すっごい悲しそうな顔を、精霊の入ったクニヒト大佐がしたが無視した。
とりあえず、自分でコントロールして、このヒモモードをコントロールするしかない。
このままだと、俺が皆の遊びに使われてしまう。
イージス艦の舳先に着くと、精神を整えた。
俺の力は願えば叶うもののはず。
だからこそ、強く思えばコントロールできるはずだ。
もう、それしかない。




