第三十一部 第四章 アマリア
「ん? あれ? 囲まれている」
俺が周りを見回して言った。
「マジか? 」
親父が聞いた。
「うん。コンチュエとか近代兵器じゃないね。神族の気配がたくさんするから、アマゾネスか」
「そうか。で、使徒のガムビエルにやってもらうのか? 」
「ガムビエルは保留するって、どうしてもなら攻撃するけどってさ」
「何で? 」
「相手が神族なのと、相手が話し合いを望んでるみたい」
俺が答えた。
「兄弟、ガムビエルらしいものと話すたびに目が赤くなってるけど、大丈夫なのか? 」
アポリトが聞いてきた。
「大丈夫だ。問題ない」
俺が心配するアポリトに優しく笑ったら、激しく俺が光ったのか、全員が顔を伏せる。
「何だろうな、この輝きは」
クニヒト大佐が愚痴った。
「話がある! 」
外から大きな声で叫ばれた。
「ほら、お呼びだぞ」
親父が笑った。
俺達が全員で甲板に出ると寝室から許嫁達も部屋から出て来たようだ。
俺を見て、許嫁達が真赤になりながら、ほぅとため息をついてる。
なんか、こう、大丈夫なんだろうか。
見た感じ、トロトロの目をしてるし。
甲板から下を覗くとイージス艦を取り囲む様に三十隻くらいのアマゾネスのガレー船が取り囲んでいる。
すべて、選りすぐりの美少女ばかりだ。
そのガレー船の中にひときわ大きなガレー船があり、三階建ての珍しいガレー船だ。
そう言えば、帆船で三階建てとかあるのは、帆船同士で船員が戦う時に高さがある方が優位なのだそうだ。
階数が多いガレー船がいくつかあるので、やはり白兵戦専門の船と言う事なんだろう。
余談だが、スペインの無敵艦隊がこのタイプの艦船で、対してイギリスの艦隊は高さの無い艦船で大砲の性能だけでアウトレンジ戦法で無敵艦隊を破ったそうだ。
ひときわでかいガレー船の三階建ての上甲板に一際だった美人のお姉さんがいる。
それがうちの許嫁のマリナを睨み付けた。
「マリナ! まさか、本気で裏切るとはね」
その美人のお姉さんがマリナに怒鳴った。
「ごめんなさい、アマリア姉さん」
マリナが謝った。
「アマゾネスの主たるこのアマリアに逆らうとは妹のお前も偉くなったものだね」
美人のお姉さん……アマリアがマリナにギリリと歯軋りするような目で言った。
なるほど、最初の裏切りは嘘だったんだ。
埋伏の毒と言う奴だな。
だけど、寝返ったと言う訳か。
「だって、だって、私……私……もう、雌豚になったからぁ! 旦那様の雌豚にぃぃぃ! 」
マリナがトロトロの顔で叫んだ。
「「「「は? 」」」」
この空気の重さを果たして理解できるでしょうか。
アマゾネス側は鳩が豆鉄砲くらったような顔してるし、アポリト達は親父ですらドン引いた顔をしてる。
どうしょう。
「あ、あんた何言ってんだい? 」
アマリアが凄く動揺してる。
「雌豚になったのぉぉぉ! 雌豚にいぃぃぃ! 」
マリナがトロトロになりながら叫んだ。
すっげぇ空気が重い。
許嫁達がトロトロの顔でうんうんと頷いてるから、もう言い訳は聞かないし。
すっげぇ、ピンチだ。
どうしょう。