第三十一部 第三章 真実とは
「いや、意味ないぞ」
親父が頭を掻いて答えた。
「何故です」
樹老人が食い下がるように聞いた。
食堂にいる皆が、息を飲む。
凄い緊迫感だ。
「いや、だって、こいつが逃げに特化した時点で、上の上の想像超えたからな」
「「「「は? 」」」」
全員が凄い驚いた顔をした。
「だから、言った通りだよ。あり得ない方向に突っ走ってんだ、こいつ。すべての創造主たるあの御方の想像を超えたんだから、凄いっちゃ物凄いがな」
親父が笑った。
「はあ? 」
樹老人の顔が引き攣ってる。
「まして、最初の進化でヒモだもんな。意外性っちゃ意外性だろうけど、これ想定すんの無理だろ」
親父が頭を掻いた。
「このすべての世界の創造主たるあの御方の想像を超えたと」
樹老人が途方も無く驚いたように聞いた。
「どこかで修正に動く可能性はあるけど、今はそのままにしてるな。それ自体は理由があるらしいが、下っ端の俺が知る訳がないし」
自嘲するかのように親父が答えた。
「俺に教えてくださった御方は、すべての創造者たる御方のご側近の方で、お前の意外性自体はすべての創造主たる御方は好ましく思っているそうだが」
親父が笑った。
それは何となく、困ったような、だが優しい笑いだった。
「ど、どういう事ですか? 」
樹老人の顔がさらに歪む。
「悪い意味では無いだろうよ。お前が産まれた事はすべて大きな大きな全ての創造主たる主の経綸のとても大きな事なんだそうな」
「どゆこと? 」
俺が困ったように聞いた。
「知らんよ。だって俺は下っ端の下っ端の下っ端だぞ。分かる訳がないさ。まあ、でも、面白い息子が産まれたとは思うよ。上の方々は最初は俺の奥さんの為に、お前を殺すつもりで戦えと言ってたんだが、お前が逃げるのを特化して選択した後は、父親として思う事をしろに変わったんだ。そういう意味合いで言うとお前はたいしたやつだと思うぞ」
親父が俺の肩をポンポンと叩いた。
「え? 最初は殺せだったの? 」
俺が驚いて聞いた。
「そりゃそうだ。だって俺の立場側からしたら敵だったもの」
親父が破顔した。
「えええええ? 」
俺の声が歪む。
「まあ、俺の知ってる事はこれが全部だ。それ以上は知らんよ。母さんはひょっとするともう少し知ってるかもしれんが、すまんが今は怖くて会えません」
親父が最後は震えるような顔をした。
どうしようもねー。
「私は知らん事ばかりだ」
樹老人が困惑しきった表情だ。
「まあ、俺はある創造主の側近である御方にそっと教えて貰っただけだからな。本来は俺が知るはずも無い話だし。貴方が気にする事ではないと思うよ」
親父が樹老人を慰めるように言った。
「あーあ、親父が珍しい事した」
「何だよ」
少しまぶしそうな顔をして親父が膨れたように聞いた。
「いや、親父が珍しい事すると碌な事が起きないじゃん」
「ああ、そんなのあったな」
親父が笑って答えた。
この辺は神道系宗教家の出口王仁三郎氏の、八百万の神はキリスト教で言うなら天使。元の元の創造主は教えは違えど皆同じという考えに近い感じで書いてます。別にそういう信仰はしてませんので悪しからず。ちょっと神様とか、ごっちゃじゃんと言う方もいるかと思って補足で書きました。