第三十部 第五章 エレネ
「ねぇ、そう言えば、彼って、そろそろ進化だよね」
カガが異様な雰囲気を感じたのか、全員で食堂に居る時に、ユウキの寝室の方を見て聞いた。
「むう、確かにな。そろそろ起きて不思議では無い」
樹老人が静かに答えた。
「進化とは何です? 」
茶を飲みながら、ヨシアキ大佐がカガと樹老人に聞いた。
「ああ、<終末の子>たる力の顕現じゃ。人々を救う救世主として、まさに人類を救う力を授かるのじゃ」
樹老人が熱く語った。
「……だよね。そのはずだよね」
カガが不安そうに答えた。
「何かあるのか? 数時間前位からそわそわしてるけど」
シュウジが茶をすすって聞いた。
「ああ、実は三時間前くらいから、彼の寝室から妙な凄い力の波動があって」
カガが首を傾げた。
「ああ、確かに、三時間前かの? 異様な力が一瞬出ておったな」
樹老人が答えた。
「それなんだけど、何だろう」
カガが不安そうに聞いた。
「まあ、今、寝室に入る訳に行かんしな」
シュウジが茶を置いた。
「ここで、進化したら、どうなるんだろ。まさか、全然違うものになったりしないよね」
「いくらなんでも、こんなとこで進化とは……」
樹老人も言いながら不安そうな顔になってる。
「うちの息子なら、あり得るけどな」
シュウジが満面の笑顔で答えた。
「だから、それがいけないんでしょ! 」
カガが怒る。
「それにしても、何か想像と違う<終末の子>ですね」
途中からイージス艦に乗ってきたダグダ師匠が笑った。
「確かにな。伝承と違うんで悩むよ」
カザンザキスさんが茶をすすって言った。
「まあ、意外性の<終末の子>と呼んでほしいですな」
シュウジが親指を立てた。
「うわぁ、何だろ、このデジャブ」
クニヒト大佐が菓子をつまみながら苦笑した。
「親父さんだけあって、兄弟にそっくりだな」
アポリトも苦笑した。
「ほら、君が悪いんじゃないか」
カガが呆れたように言った。
「そのとおりですね」
いきなり、食堂のドアの所から声がかかる。
茶色がかった金髪でブラウンの目が印象的な十八歳くらいの相当な美少女がそこに居た。
手にはベレッタM92が握られている。
「貴方のせいで皆が迷惑しているんですよ。お義父さま」
「おっと、エレネか」
シュウジが少し緊張したように答えた。
「ど、どなたですか? 」
カザンザキスさんが困ったように親父を見た。
「ああ、息子の許嫁の一人です」
シュウジが頭を掻きながら説明した。
「めったやたらに許嫁を作るから、そうなるのです」
エレネの声が冷たい。
「むう、強いな」
アポリトが索敵した様で驚いたようだ。
「まあ、戦の神アテネの血筋の娘だからな」
シュウジが笑って言うと、髪の毛をかすめるようにベレッタM92で撃たれた。
はらりとシュウジの髪の毛が焦げ臭さを残して落ちる。
「そういう所が駄目なんです」
エレネがじろりとシュウジを見た。