第二十九部 第六章 シャーロット
情勢が変わったせいなのか、親父のせいなのか分かんないが、結構近くに潜んでいたせいで、潜水艦と言っても原潜なのだが、すぐにスコット中佐がやって来てくれた。
海岸沿いのカザンザキスさんの帆船が大量にある港に原潜がついた。
そこへ、使徒のガムビエルがイージス艦を運びながら現われる。
もっとも俺や親父やカザンザキスさんや許嫁達は港で原潜を迎えてるが。
原潜から、スコット中佐とルイス中尉らしき人物が出てきたと思ったら、金髪碧眼のショートカットの美人が迷彩服を着て出てきた。
そのショートカットの女性が俺を見つけると、物凄いスビードで俺に抱きついてきた。
ほんげぇぇぇぇぇぇぇ。
「え? シャーロット? 」
親父が横で凄い顔してる。
なんだこれは?
俺の背後の許嫁がいるあたりから、まるで凍りつくような凄まじい気配がする。
怖くて後ろが向けません。
「やっとユウキ様にお会いできました」
シャーロットが少し涙ぐみながら俺に頬ずりする。
何だろう、後ろから空間がひび割れる音がする。
前のスコット中佐とルイス中尉の顔が、ライオンの群れに放り込まれた男のような顔をしている。
怖すぎる。
俺が救いを求めるように親父を見ると、親父が目を背けた。
最悪や。
しかも、この気配に押されて誰もしゃべらない。
誰か、何かきっかけをください。
「えええと、シャーロットさんでしたっけ? 」
俺が仕方なく聞いた。
「はい、貴方の許嫁です」
シャーロットがいきなり核爆弾を放り込んだ。
みしりと背後から足音がする。
「失礼ですが。向こうの世界でどうだか知りませんが、こちらでは違いますから」
アオイの震えるような声がする。
スコット中佐とルイス中尉がジャンガリアンハムスターみたいな目で震えてる。
「私は、別に今までがどうでも気にしません。大切なのはこれからですから」
シャーロットが俺に抱きついたままだ。
「へぇ? 」
アオイの重圧のある声がする。
やばい。
親父の言うとおりだ。
母さんに似てるわ。
これ、引かないタイプだ。
シャーロットが俺から離れて、アオイにガンをつけたまま睨む。
「大切なのはこれからですから」
シャーロットがガンつけたままアオイに引かずに前に出た。
「愛とは積み重ねです」
アオイが凍るような声で、シャーロットの前に進み出たようだ。
ようだと言うのは怖くて見れないからで……。
救いを求めようと親父を見たら、しれっとスコット大佐とルイス中尉のとこに行っちゃった。
汚すぎ。
親父は笑顔でスコット大佐とルイス中尉に近づいているようだが、スコット大佐とルイス中尉の顔が土気色になっている。
それだけで、横で何が起こっているか分かる。
怖すぎる。
「貴方だけが強いと思ってるようですが、違いますよ」
物凄い威圧感とともに、シャーロットが笑った。
空気が震えると言うか、空間にひびが入ったような気配がする。