第二十八・五部 第五章 料理勝負Ⅱ
先ほどから脂汗が止まりません。
「料理勝負再びだな」
クニヒト大佐が言った。
「……ヤバイのか? 」
親父が凄い不安そうだ。
「かなり」
俺が凄い小声で言った。
「ミツキにしても、母ちゃんは料理旨いのになぁ」
「やめてよ。やめてよ。それ煽りになるから」
「前回はドラゴンの活造りだった」
「は? ドラゴンの肉って毒じゃ無かったか? 」
親父が小声で驚いたように言った。
「あの時はグリルとグリラさんとか言う料理の神様が居て、光を当てて毒を消してくれたんですよ」
ヨシアキ大佐が声を潜めた。
「量が少ないと良いんだけど……」
俺が呟いた。
「そ、そうか兄弟。完食しないといけないのか」
アポリトがくわっとした顔で聞いてきた。
「やばいな。何かの苦行なのか? 」
ヨシアキ大佐が頭を抱える。
「むう、いい匂いと微妙な匂いが漂ってくる」
俺が匂いを嗅ぎながら呟いた。
「くっ、微妙な匂いが俺にも分かるのが辛い」
カルロス一世が怖い顔をした。
皆が暗い顔をして見守る中、一時間くらいたって、深雪とさくらが丼物らしい料理を持ってきた。
「こ、これはまさか」
俺が感動した。
カツの揚げた匂いがする。
「嘘だろ! こりゃ、凄い! 」
親父が大喜びだ。
「堅パンのカチカチなのをパン粉にしてみました」
深雪が笑って答えた。
間違いない。
まさかのカツ丼だ。
「こ、これはカツ丼ですか? 」
ヨシアキ大佐が嬉しそう。
「向こうの世界の人が作るカツ丼は初めて食べるな」
クニヒト大佐も嬉しそうだ。
「こちらも出来ました」
微妙な匂いのものを持ってアオイとミツキが来た。
大きな鍋がぐつぐつ言ってる。
まさかの鍋物とな。
鍋が凄いでかい。
こ、これを全部食べるのか……。
そう思いながら顔を上げると、男達全員の目があった。
同じ事を全員が思ってたらしい。
「に、匂いが、その……珍しいな……」
親父が控え目に言った。
「うん。普通の食材じゃ深雪さんやさくらさんに勝てないから工夫したの」
ミツキが凄い笑顔だ。
全員の顔が強張る。
なぜ、普通の食材を使わない。
「ほ、ほう。独特な匂いだな」
親父が脂汗を流しながら答えた。
「ええ、あちこちイージス艦の下の方を探してみたんです」
アオイが満面の笑みを浮かべた。
あかん、すでに食材と違うのではないか?
そういう恐怖感がハンパ無い。
俺がそう思ったら、カガが俺見て凄い顔してる。
「? なにか思われましたか? 」
小首を傾げて可愛らしくアオイが聞いた。
ふぅ、何も知らなかったら、凄いかわいい子なのに……。
「いえ、別に」
心の涙が止まりません。