第二十八・五部 第二章 君の名は
深雪とさくらのおかけで、渡り鳥は山賊焼と内臓の炒め物になった。
料理が本当に旨いので驚くくらいだった。
結果、次の日から、渡り鳥がイージス艦に来るのを楽しみにと言うより、猟犬のような目で皆で探すようになった。
つい食い過ぎちゃったので、また具無しスープと堅パンしかない。
「ちょっとだけでも旨いものを食うと辛いな」
アポリトが言いながら、鳥がいないか探してる。
「思い切って、聖樹装兵で取ってきたらどうだろう? 」
カルロス一世が聞いてきた。
「いや、敵認識されたら一瞬で蒸発するぞ? 」
親父が懐疑的に答えた。
「じゃあ、<終末の子>たる甥が聖樹装兵で行けば良いんじゃないか? 」
カルロス一世がしつこく言った。
「いや、それは俺も考えたんだが、この船が敵認識されたら困るしな。大丈夫だとは思うが、やはり不安がある」
「つ、使えんなー」
カルロス一世が恨めしそうに俺を見た。
「いや、そう言われても、俺、使徒の使い方を知らないしし」
「そう言う感じで聖樹装兵は乗りこなしたんだろうが」
「これ、俺が動かしてんじゃないし」
俺が第一使徒を指差して言った。
「命令して見ろよ。もう一度」
親父が聞いてきた。
「いや、それが、名前を忘れちゃって」
俺が頭を掻いて笑った。
「「はあ? 」」
親父とカルロス一世が唖然とした顔してる。
「えええ? それじゃ、せっかく使徒がいても使えないんじゃ? 」
クニヒト大佐が突っ込んできた。
「名前で命じないと難しいと思うぞ」
龍女さんが言った。
「どうすんだよ? 」
「いや、親父も覚えてないの? 」
「ガムがどうのとしか覚えてないな? 」
親父が苦い顔してる。
「マーターがどうのと言ってませんでした? 」
カルロス一世も首を傾げてる。
「だ、誰か覚えてる人いないの? 」
親父が皆に聞くと、皆が首を振った。
「カガさんとか覚えてないの? 」
「いや、知らないよ。そもそも、使徒なんているなんて初めて知ったし」
「どうすんだ。これ。この使徒どうすんの? 」
親父が俺に聞いてきた。
「いや、そもそも、俺は気絶してたし」
俺が反論した。
「相変わらずの糞展開だな」
カルロス一世がため息ついた。
「あの船とかと話が出来たらねぇ」
ダグダ師匠が数百メートル下を航行する船を指差して言った。
「アサナト時代なら、あの程度の船ならすぐ占領できたのにな」
アポリトがため息をついた。
その時、はっと思いついた。
「ひょっとして、樹老人とカガさん、今ならテレポート出来るよね」
俺が樹老人とカガさんを見て言った。
「そ、そうか、テレポートして行けばいいんだ」
ダグダ師匠が喜んで言った。
「ち、ちょっと、待て。突然、わしが現われたとして向こうが交渉に乗るかの? 」
樹老人が動揺して答えた。
「僕なんて子供の姿だよ? 」
「誰が交渉するなんていいました? 」
俺が言った。
「「は? 」」
樹老人とカガが凄い顔した。
「食糧庫から肉とか取って来てくれたらいいんですよ」
俺が満面の笑顔で言ったら、樹老人とカガが見た事も無いような凄い顔をした。