第二十六部 第八章 対決
巨大な鮫が次々と、旗艦艦隊の旗艦に体当たりを始める。
「あれ、そろそろ来たかな」
俺が甲板の上で呟いた。
海の中から、リヴァイアが顔を出してクーと泣く。
凄い疲れ切ってるように見える。
「すまん。リヴァイア」
俺が謝った。
「ご苦労様」
横でアオイが笑った。
怖くて注意できません。
目の前に魚に乗った人魚姫がいる。
前回会った時より、老けているような気がするのは気のせいか?
「まあ、潮風に当たるだけでもやばいのに、ずっと魚の上に乗ってたら、老けるわよね」
ミツキが横で呟いた。
何と言うシビアな。
「悪いけど、使わせて貰うよ」
そう言って、俺が人魚姫に手をかざした。
「心を攻める」
俺が呟いた。
「ほぅ、それが例のトラウマの奴か」
親父がのんきに言った。
人魚姫との間に双方向の巨大なスクリーンが出て画像が映る。
人魚姫視点で、何か水着を着た若い綺麗な女性に怒鳴られてるようだ。
「何が、人魚姫よ! 良い年こいて馬鹿な真似して恥ずかしくないの? 貴方の従妹でいるのが恥ずかしいんだけど! 」
どうも従妹らしいが、その女性に馬鹿にされている。
本人視点だが、かなりしょげているようだ。
「薄汚いババアなんだから、理解しなさいよ。あんたなんかゴミ姫がお似合いよ! 」
言いながら従妹が人魚姫に海辺で飲んだジュースの缶とか入ってるゴミ袋のゴミを頭からかけた。
本人視点で頭に残ったジュースがかかって目の前に滴っている。
視点で本当に落ち込んでいるのが分かる。
「あれ? ちょっと、可哀想だよね」
俺が画面を見て思わず言った。
ちょっと、想定したのと違う。
トラウマ作戦をやめようか悩む。
「兄弟、これはやり過ぎじゃないか? 」
アポリトにも言われたので画面を消そうとした。
そうしたら、六歳か七歳くらいの女の子が目の前に来る。
「えっ? 」
親父が驚いた顔をした。
「どうしたの? 」
ミツキが聞いた。
「メイヴだ。例の魔がついてるかもって子だよ」
「お姉ちゃんは人魚姫だよ。間違いないと思う」
メイヴが言ったせいで、人魚姫の視点が少し上向いて明るくなる。
「ああいう、悪い人には罰を当てないと。悪い人は死んでもしょうがないよね」
メイヴが凄くうれしそうに笑う。
「そ、そうだよね」
「ほら、まだ海底だから分からないけど、その少し先に鮫がニ匹いるよ。お姉ちゃんなら分かるよね」
メイヴが海を指差した。
その指差したところへ、従妹がジャブジャブと泳ぎに入る。
「罰を当てないと駄目かな? 」
人魚姫が聞いた。
「うん。悪い人には当然だよ」
メイヴが笑みを浮かべた。
「分かった。罰を与えるわ。鮫さん、鮫さん、あの子に罰を与えて」
人魚姫が言うと海で泳いでた従妹が悲鳴を上げて、引き摺りこまれて、そこに大きな血の海が浮かぶ。
「お姉ちゃん。これでいいんだよ。悪い事したから、あの人は罰が当たったんだから」
メイヴがニッコリ笑った。
「そうだよね。私、間違ってないよね」
そこで画面が終わる。
「あれが、メイヴ? ペルソナがついてるとか言う子? こ、これはちょっと……」
カガが困ったような顔をする。
「これはどんな奴がついてるか決まったようなものだな」
樹老人が頷いた。
「本当だ。良い子じゃ無いか」
親父が笑った。
「だよね。あんな悪い人に罰が当たるのしょうがないよね」
ミツキも笑顔だ。
「俺もそう思うわ」
俺も横で頷いた。
「因果応報と言う奴ですね」
アオイも深く頷いた。
「「は? 」」
カガと樹老人が青い顔をする。
「ありじゃないでしょうか」
レイナさんも頷いた。
「ちょうど、ヤマト王家の百倍返しなら、あんなもんだな」
うんうんと国王も頷く。
「ええ? おかしくない? 」
「まあ、殺したんならやり過ぎかもしれんが、あのくらいは許容範囲では」
カルロス一世も頷いた。
「はあ? 何を言ってるんじゃ、おかしかろう」
樹老人が驚いて、カルロス一世に反論した。
「いや、頭にゴミ捨てる方が悪いですよ」
カルロス一世が左右に手を振りながら答えた。
「「「「だよね」」」」
俺達が頷くとカガと樹老人が凄い顔をした。




