第四部 第一章 プロローグ
「ドンドン手紙の内容が卑屈になって来ますね」
アオイがヤマトから来た手紙を横で読んで言った。
「正直、ヤマトの王族に末席でも連なるものとしたら、ちょっと切ないですね」
あれから、ヤマトは必死に手紙をこちらに寄越すが無視してた。
「そろそろ、許してあげてはどうかね」
実はヤマトを滅ぼすつもりだったのだが、カザンザキスさんが辞めるように必死の説得をしてきた。
つまり、別荘地で観光地がメインのパトリダにとって、この世界の主流国であり救世主の件で盟主となるヤマトを敵に廻すのは、やはり避けたいと。
まあ、とりあえず、緒戦で勝ったし、相手の弱みもある。
ここは政治的判断でとの事で、とりあえず、戦争はやめた。
だが、許すかどうかは別問題である。
「これは兄弟。あれか? 無視して無視して、相手がドンドンお詫びの品を増やすのを待ってるわけか?
それで、どこかで、お詫びの品を減らして、これで良いから許すよと恩を着せるわけだよな」
アポリトが俺に聞いた。
「さすが、兄弟だ。その通りだ。だが、俺の妹に汚い仕事をさせてた件だけはケジメを取る気だ」
まさか、自分の妹がこちらの世界で変な汚れ仕事やらされて、工作員みたいになってると思わなかった。
しかもバス事故で死んでなかったし、俺はあの時、散々泣いたのだ。
ひょっとして父母も生きてるかもしれないが、妹には分からないそうだ。
あれから、妹の方は話があるのと必死に騒ぐが、動揺してるみたいなので、落ち着いてからと言う事で、ムラサキについて貰ってる。
「とうとう、公爵から大公にするって言ってるよ?」
カザンザキスさんが本当に困った顔をしてる。
「どうせ、ぼっちになるだけですし。それ罰ゲームです」
俺が答えると、アポリトが頷いた。
どうして、ヤマトの連中は気が付かないのか腹が立つ。
特殊作戦部隊だの、救世主様だの、大佐だのと持ち上げといて、くっさい毛布に残飯だし。
大公とか持ち上げといて、落ち葉の布団に、腐った飯にランクダウンしたらどうするのか。
「そんなものよりはお金の方がいいですね。スーパーとかの建設資金や新事業に回せるし」
同情するより金をくれだ。
「そうか、君の事業は我が国にとっても大切だしなぁ、うーん。」
カザンザキスさんが悩ましい顔をした。
パトリダにとっても俺の事業は最重要だ。
なにしろ、二流国の下の方であえいでたのが、一流国になれそうなのだ。
「そのあたりは君に任せよう」
カザンザキスさんが笑った。
「ありがとうございます」
良い義理の祖父を貰えて俺は幸せだ。
と言うか、たまにデレるようになったアオイだが、叔父達の言うように襲ってこないし、誘っても来ない。
この世界では貴重な存在なのかもしれない。
ムラサキの方が積極的なのだが、ヘタレな俺は、もう一歩が踏み出せないでいる。
正直、ムラサキもすごく大事だし、別にこの世界では、高貴な人間がそっち系に行くのも全然おかしくないらしいのだが、やっぱり勇気がいる。
ユウキなのに勇気が足りない。
これは、俺が昔、痔だったのも関係あるのかもしれない。
軽いいぼ痔だったのだが、見せたらいきなり手術になって切られた。
早く処置した方が良いとかゴリ押しされた。
縫って中が腐ると駄目なので、傷口を剥き出しにしてそのまま治癒させるそうな。
縫ってないから、便が通ると、震えるような激痛が走る。
あまりの痛さに先生に言ったら、それは痛いと思うから痛いんだよって笑顔で言われた。
今にしてみると、何かのSMプレイだったのだろうか。
などと考えていると、妹のミツキが部屋に入ってきた
「兄貴、話を聞いてよ! 」
とりあえず、耳を指でふさいでみた。
どうせ、碌でもない話なのは分かっていたからである。
この痔の話が残酷描写になったらどうしょう。
ちなみに私は痔の王様痔ろうで手術しました。
痛いと思うから痛いんだよって笑顔で言われたのは実体験です。
先生に麻酔が効いてないのに、レーザーメスで尻の穴を焼かれたのはいい思い出です。
「いやぁ、麻酔が効いて無かった? すまんすまん」
あの声がいまだに忘れられません。