第二十六部 第五章 先祖代々の馬鹿
「へ、変な許嫁より、君の方がやばくない? 」
カガが凄い焦って叫んだ。
「これはまた、心外ですね」
俺がカガに答えた。
「いや、おかしいよ。そりゃ、強いのは良い事だけど、加減を知らないし。そもそも、下品過ぎないか? <終末の子>はもっと高尚な存在だったと思うんだが」
カガが首を傾げた。
「分かりました。やはりそうでしたか……つまり、私は偽物と言う事ですね。やはりな。そうじゃないかと思ってたんです。やっと、これで商人に戻れる」
俺が笑った。
「いや、お前は<終末の子>だぞ」
青息吐息の樹老人が断言した。
「いえ、そんな慰めはいりません。今、本当の事が分かったのですから」
俺が少し、寂しそうに語った。
「もう、役目から逃げないんじゃなかったのか? 」
「いや、カガさんから駄目だしを貰いましたから」
俺が笑顔で答えた。
「……えーと、どういう事? 」
カガが困惑して聞いた。
「こいつ、<終末の子>と違うと言うと、大喜びで逃げるんだ」
樹老人が呆れて言った。
「ええええ? なんで、そんな面倒くさい性格してるんだ? 」
「そりゃ、逃げるさ。だって、にんげんだもの」
親父が答えた。
「が、元祖はこれか」
カルロス一世が顔を覆った。
「ほら、シュウジのせいじゃないか! 」
カガが激怒して叫んだ。
「心配するな。この言葉は実は前国王だった親父のいつも言ってた言葉だ」
親父が破顔した。
「なるほど、にんげんだもの」
俺も横で頷いた。
「そのとおりだ。にんげんだもの」
いきなり貴賓室のドアが開いて国王が言いながら入ってきた。
「その言葉は実は先代国王の言葉では無い。先祖代々王家に伝わってる、やっちゃった時に言う言葉なのだ」
「「おおお」」
親父と俺が感動でハモる。
「どんな時でも使える言葉として根性のある王子にはそれがどうしたと言う言葉。根性の無い王子には、だってにんげんだものが贈られるのだよ。残念ながらわが国には聖王の時代から、ずっと根性の無い王子しか産まれなかったので、だってにんげんだものだけが伝えられるようになってしまったがな」
国王が少し寂しそうに語った。
「むう、そうだったのか。嫁が皆怖いからしかたあるまい」
親父も深く頷いた。
「だからこそ、お前こそ我がヤマトの国王になるのに相応しいのだ」
と国王が俺に握手しょうと右手を差し出した。
「だって、にんげんだもの」
俺が、その国王の手を払いのけた。
「だって、にんげんだもの」
その払いのけた手を国王が両手でガッシリと掴んだ。
「だって、にんげんだもの」
その掴まれた国王の両手を足で蹴りあげて俺が払いのけた。
「「だって、にんげんだもの」」
国王と俺でハモりながら、両手と両手でプロレスの力比べの様にがっちりと組んだ。
「もう、いいから」
カガが真っ暗な声で言った。
「うわぁ、やっちゃったな」
カルロス一世も暗い顔をしてる。
「ところで、兄貴はどうしたんだ? 」
親父が国王に聞いた。
「いや、お前達に頼みがあってな? 」
国王が俺と力比べをやめて言った。
「頼み? 」
「ああ、すまんが、人魚姫を先に倒してくれ」
国王が皆を見回した。




