第二十六部 第二章 母さん
「で、魔の物の婚約者はどうするんです」
樹老人が聞いた。
あれから、俺達は、あそこで朝のもう一度になると困るので、一旦移動して、親父とかカルロス一世が泊まってた別館の貴賓室の方に居た。
そこには、クニヒト大佐は居なかったが、アポリトも緊急と言う事で、体調が不調なのに来てくれて、結果として、俺とアポリトとヨシアキ大佐とヨシアキ大佐の部下の衛士達とカルロス一世と親父とカガと樹老人と和真とダグダ師匠とサイトウ公爵がいた。
サイトウ公爵は近衛の将軍なので参加しろと国王に言われたらしい。
再建の方は国王と宰相とイジュウイン大公でやってるようだ。
その場で、いきなり樹老人が話せるようになった親父に詰め寄って聞いたのが、話し合いの最初の言葉だった。
「ああ、それも、考えた。この際だ、息子の為にも俺も協力して、その魔を倒そうと思う」
親父が答えた。
「つまり、母さんにばれる前に始末しておこうと言う事だね」
俺が聞いた。
「そのとおりだ」
恥もてらいも無く親父が答えた。
「はあ、そんな理由で我々に信じろと」
樹老人がため息ついた。
「いや、この理由だから、ガチですよ」
俺が笑った。
「そのとおりだ」
親父が横で胸を張って頷いた。
「母さんの怖さはハンパ無いんで、間違いないです。ションベンちびるくらい怖いですよ」
「そのとおりだ」
親父がさらに胸を張った。
「やれやれ、皆殺しのシュウジが尻に敷かれてしまって、どうなんだい? 」
カガが苦笑した。
「尻どころか床に敷かれてますが」
俺がきっぱりと答えた。
「そのとおりだ」
親父がさらにさらに胸を張った。
「女媧殿はそんなに怖いのか」
樹老人が不思議そうに聞いてきた。
「キレるとうちの許嫁全員合わせてより倍以上怖いです」
俺が身震いして答えた。
「マジか」
カルロス一世が驚いてる。
「髪の毛掴んで、連続の顔面膝蹴りとかハンパ無いっすよ」
「そのとおりだ」
身震いしたように親父が答えた。
親父は何度か食らってるからな。
「え? 女神だよね。しかも美の女神」
カガが驚いたように聞いてきた。
「それが豹変するから怖いんですよ」
俺が答えた。
「そのとおりだ」
親父が泣きそうな顔だ。
「なんだか、聞いてて辛いな」
カルロス一世がため息ついた。
「とにかく、母さんにばれるまでに始末したい。その一心だ」
親父が胸張って祈るような顔をした。
「嘘言って無いのは、俺が保証します」
「なんか、わしの女媧殿へのイメージが変わってしまうんだが」
樹老人が困ったように言った。
「いや、本当に怖い人は笑顔で顔面パンチとハイキックを同時に流れるように出来る人ですから」
俺が言うと親父がうんうんと頷いた。