第二十五部 第六章 乱戦
「嘘でしょ」
横でキョウカさんが戸惑ってる。
むう、どう声かけて良いのか。
皆が一斉にレイナさんを見る。
「父は死にました。問答無用です。皆でやってしまいなさい」
レイナさんが一喝した。
兵士達が弓を構えて次々と国王のあたりに撃ち込み始める。
スキルでファイヤーボールを持つもの達が、次々と国王の居るあたりに絨毯攻撃した。
横を見たらミヤビ王女も鬼みたいな顔でファイヤーボールをぶち込んでた。
デスピナはすでにジャンプして王宮の背後に逃げた。
国王が走り回って攻撃を避けてる。
「嘘! 嘘! 嘘だから! 演技なの! 」
国王が逃げ惑って叫ぶ。
兵士達が一斉にレイナさんを見た。
でも、レイナさんが辞めろと言わないので、そのまま攻撃し続ける。
国王が意を決して、こちら側の木の上に飛び降りて、枝をバキバキ折りながら降りた。
「演技だって言ってるのに! 」
国王があばらを打ったらしくて、蹲ってる。
「私も演技でしたよ」
レイナさんが皆の攻撃を手の動きで止めると国王に笑顔で答えた。
「ほんとかな」
ミツキが小声で囁いた。
「駄目だ。考えちゃ駄目なんだ」
俺が小声で返す。
「分かるわー」
俺にカルロス一世が同意した。
せつない。
「ちょっと、あれ! あれ! 」
キョウカさんが後ろを指差した。
振り返ると、包丁持った市松人形があちこちの炎に照らされながら、何体も立っている。
「ひえええっ! 」
怖えええっ!
もう、夜なのに、会いたくないのに会ってしまった。
市松人形が包丁を構えて一斉にこちらに向かってくる。
「焼きつぶしなさい! 」
ミヤビ王女がスキル持ちに呼びかけて、ファイヤーボールで次々と市松人形を焼き払う。
一度食らわせた後、さらにぶち込んで灰にする方向だ。
とは言え、凄い怖い光景だ。
「うわぁ、双方から攻撃を受ける訳? 」
マリナが焦ってる。
「とりあえず、俺が目的なら、一旦俺達は燐女さんの島に向った方がいいかな? 」
レイナさんに声をかけて聞いた。
「出来たら居て欲しいんだけどな」
ちょっとデレた感じで囁かれた。
さっきの見てるから、ちょっと怖い。
これで、じゃあ行きますって言えないよな。
そしたら、いきなり長い長剣で斬りつけられる。
慌てて、俺が轟天で受けた。
「やっぱり、生き生きとしてて若いのは良いねぇ」
デスピナが口元を涎を垂らしてる。
まあ、ババアっちゃババアだけど、思ったより若い。
「どうしたね。見惚れちゃったかい? 」
じゅるりと口元を舐めながら笑った。
むう、猛獣系か。
長剣がひらめくのを何とか轟天で受ける。
思ってたより、ずっと強い。
「相当重い剣なはずなのに、早いね」
俺が驚いた。
「当たり前さ。ガキの頃から振るってるんだ。それより、思ってたよりずっと強いじゃないか。これなら、強い赤ちゃんが生まれるよ」
デスピアが凄く嬉しそうだ。
むぅ、笑えません。
「待ちな。そいつは俺が相手する」
いきなり、背後から声がかかった。
誰かと思えはホアンさんだ。