第二十五部 第四章 開戦
「おや? どうやら<終末の子>が帰ってきたようだね」
王宮の高い所から、大きく叫ばれた。
皆がしんとなってそちらを見る。
潰れた肉まんが喋ってる。
「ほう? マリナじゃないか? 捕虜になったのかい? そうは見えない感じだね」
「マリナじゃありません」
マリナが変顔して答えた。
はっきり言って、ばればーれ。
「はっ、このデスピナ様が見間違う訳ないだろ! 」
潰れた肉まん、デスピナが叫んだ。
「ちっ! ババアが出て来るんじゃないよ! 」
マリナが叫んだ。
まあ、口が悪い。
って待て?
ババアだと?
遠くで見えないがババアなのか?
「え? 老けてんの? 」
俺が驚いて聞いた。
「三十九だか四十だと思った」
マリナが答えた。
「嘘、ババアじゃん」
俺が焦った。
「おい、俺の嫁の前で言うなよ、命が無いぞ」
カルロス一世が固まった顔だ。
「了解しました」
カルロス一世に敬礼して答える。
「私も言わないで欲しい。せつない」
ヨシアキ大佐も横で呟いた。
「え? 」
「主だって言ったでしょ」
ヨシアキ大佐の顔が暗い。
重い、重すぎる。
「いい度胸だマリナ。あんたも粛清だね」
デスピナが笑った。
「はっ、やれるもんならやってみな! 」
マリナが叫び返した。
「良いだろう。さて、<終末の子>とか、この国の国王は人質にした。お前が来ないと国王は死ぬことになるぞ」
デスピナが脅すような素振りで笑った。
まるで舌なめずりをするような雰囲気だ。
「殺すなら、殺しなさい! 」
レイナさんが叫んだ。
「って? え? 」
俺も思わず、びっくりしたが、皆も息を飲む。
「大丈夫。私と一緒にこの国を建て直しましょう」
レイナさんが俺に凄い笑顔だ。
やべぇぇぇぇ。
宰相とイジュウイン大公とサイトウ公爵が涙を静かに流してる。
子供が出来て悲壮な顔で参加してる白人さん達が凄い顔してる。
自分の子がこうなったら嫌だろうな。
見てて思う。
「明日は我が身だな」
カルロス一世も複雑な顔した。
胃が痛い。
「よし、いい度胸だ。女はそうでなくちゃいけない」
デスピナが破顔して答えた。
「さあ、お前達、私の為に戦っておくれ」
デスピナが叫んだ。
それと同時にピンク色の光が俺達のまわりに迸る。
何だ、これ?
「気を付けて! あいつのチャームだ! 心を強く持たないと相手に魅了されるよ! 」
マリナが叫んだ。
「魅了って……無謀じゃね? 」
俺が素で言った。
「難しくない? 」
カルロス一世も横で素で言った。
「ち、ちょっと、素で言わないでよ」
マリナが慌てて答えた。
いや、だって何という無謀な力なんだ。
「昔、綺麗だったのかな? 」
俺が聞いた。
まあ、それなら分かる。
「いや、それは……」
マリナが言いよどんだ。
潰れ肉まんのままかよ。
すげぇ、スキルだ。