幕間
西洋風の高貴な雰囲気のある城のような洋館を黒いサングラスと黒い背広を着た男達と、地元の警官らしい人間が多数捜索している。
その隅で、小さなホログラフィと話している、これまた黒いサングラスと黒い背広を着た男がいる。
周りの黒い背広を着た連中よりも年嵩で、その場の責任者のような雰囲気がある。
話している相手は女媧だった。
「それで、屋敷の人間は? 」
女媧が聞いた。
「行方不明です」
黒いサングラスと黒い背広の男が答えた。
「そう。引き続き捜索を続けてくれる? 」
女媧の言葉を聞いて、黒いサングラスと黒い背広の男が深く頭を下げた。
「どういう事でしょうか? 」
初老の男が聞いた。
クラックス財団のトップである某国の公爵だった。
「どうも、娘さんの中身が昔から違った様子があるのよね。ぶっちゃけ、恐らく魔が入ってたと思うんだけど。まあ、あの宿六も気が付いてたみたいだけど」
女媧が呆れたように言った。
「魔ですか? 旦那様が出てくると言う事は……」
「そう、娘のメイヴさんが、うちの<終末の子>の婚約者の一人なの」
「となると、今、向こうの世界に行っているのでは? 」
「その可能性が高いわね」
女媧が考え込む様な顔をした。
「厄介な事になりそうですね」
「魔とは言っても、信仰する民族の力関係でそう呼ばれただけで、実態は神族に等しいし、能力も劣るものでは無い。問題はメイヴについてたのが、かなりの高位っぽいのよね」
「向こうの世界でも魔の方側が、こちらの世界とあちらの世界の大戦に介入を始めたと聞きましたが、いよいよ、こちらの世界も関わって来たと言う事ですな」
公爵も困ったような顔をした。
「問題はあちらの世界に行ってまで、何をしたいのかよね。たんに会いに行くつもりでは無いでしょうし。あまり、よろしくない予感もするわね」
「何か対応をいたしましょうか? 」
「これ以上、今回の婚約騒動の戦線を拡大したくないのも確かなのよね。本筋とは違う話だし」
「そうですね。こちらの世界とあちらの世界の対決とは違いますからね」
公爵が苦笑した。
「しばらく、様子を見ましょう」
「分かりました」
公爵が頭を下げると、一斉に、周りにいた黒服の男達も頭を下げた。