第二十四部 第十四章 生臭い人魚
魚の群れが甲板に飛びこんでくると同時に固まりになり、それが人魚の形を作る。
え?
口をパクパクさせた魚がまとまりながら一個の人魚の個体の様に動いてる。
「ちょっと! 人魚ってこういう意味なの? 」
ミツキがドン引いてる。
「知らない。やばいって話だけしか聞いて無かったし」
恋が叫んだ。
再度、魚の群れが固まりで飛びこんで来て人魚の形をすると這いずるように動き出す。
バラバラの魚がそのまま集まってるので、凄く生臭い。
わざわざ魚を甲板の上に上げて動かす意味が分からん。
「うわ、昔、人魚姫と揉めた人が生臭いって言ってたのこれか」
麗が叫ぶ。
やばいって言うより、臭いしババアだし迷惑なだけかよ。
人魚を形作る魚は苦しそうにそれぞれが口をパクパクとさせている、その頭の部分がアポリトの口をふさいだ。
え?
キスのつもりなんだろうか?
アポリトの口元あたりでパクパクしてる魚たちがきしょい。
流石に甲板の皆が黙った。
アポリトが気色悪さで、びくびくと痙攣してる。
「こわっ! こわっ! 強いより厄介だろ! 」
カルロス一世が聖樹装兵のライフルで人魚を撃った。
ライフルの生体レーザーで生魚が焦げたせいか、凄く香ばしい香りがする。
やべぇ、なんだか分かんない。
「ワイバーン! 焼き払え! 」
ミツキが甲板の厩舎にいるワイバーンを厩舎から出して、生魚の人魚に火を吹かせる。
生魚の人魚も燃えるが甲板も燃える。
宰相が、焦げて動かなくなった人魚からアポリトを引きはがした。
すんげぇ顔でアポリトが気絶してる。
と言うか、宰相が慌てて、アポリトの口の中の魚を引きだした。
口の中に入ってたのか。
キモイ、キモすぎる。
「とにかく、早く、逃げないと」
燐女さんが強襲型の蒼穹船を連射させながら、船に近づけて次々と許嫁達がそれに乗り出す。
もう船もこれだけ燃えると、もう無理じゃないかなと言う状態になる。
「くっそ、腹立つ! 」
そしたら、懲りずに海から魚が集まった群れが次々とこちらの甲板に跳ねて乗ると生臭い人魚になる。
それが、まるでゾンビの様に這いつくばりながら、こちらに近づいてくる。
はっきり言って、きりが無い。
「これ、迷惑だよね」
ミツキが言いながら親父をワイバーンに乗せて飛び立つ。
「お兄ちゃんも、こっちに」
「その前に、構えぇぇぇぇぇ! いけぇぇぇぇぇ! 」
ミツキがワイバーンに乗るように誘うので、その前に轟天を構えて、海の魚の上にいる本体の人魚姫のおばさんにぶち込んだ。
だが、海から飛びあがる大量の巨大な魚にすら見える個体のような群れに遮られて、結局、龍女さんの時と同じく人魚姫には届かない。
そして魚の群れが飛び散って激しい爆発をしたせいか、すでに燃えてる火もさらに猛火に変わり、俺の豪華高速帆船は静かに燃えながら沈没していく。
それをミツキの乗ってるワイバーンに一緒に乗りながら、自分の船の最後を見た。
せつない。
ヤマトに来ると出費しかかからない。
碌な事が無い。
本当に涙が出そう。
「早く、こちらに乗って」
燐女さんが強襲型の蒼穹船のハッチを開けてくれたので、聖樹装兵のままのカルロス一世とともにワイバーンで乗り込んだ。
そのまま、追いすがる魚たちを強襲型の蒼穹船で迎撃しながら撤退した。
「とりあえず、私の眠ってた島に行きましょう」
燐女さんに言われて、俺が頷いた。
本当に碌な事が無い。