第二十四部 第十二章 人魚姫
「何だよ。人魚姫って」
「メッテとか言う名前だったと思う。元々魚とか海の生物を操れる異能だったんだけど、どこで間違ったかメンヘラが入って、自分を人魚姫とか言い出して……」
恋が答えた。
「私はディズ〇ー映画見て自己同化したとか聞いたが? 」
麗が首を傾げた。
確か定説では、人魚姫は失恋したアンデルセンの自己投影だったような気が……。
「あれ、確か、関わっちゃいけない人って有名だったと思うんだけど」
紅葉も堅い顔してる。
「と・お・さ・ん」
ミツキの声が怖い。
親父が土気色のまま、びくりとした。
「あれ、まさか、婚約者じゃないよね」
ミツキの声が冷たい。
「……<終末の子>と人魚姫って童話みたいだなって言われたんだよ」
親父の首がきぎぃっとこちらを向いた。
俺の頬を涙が流れて行きます。
「馬鹿なの? 」
ミツキが呆れた顔をした。
いきなり、船の周りに血が拡がる。
「まずい。バラクーダと鮫を操って、シーサーペントが攻撃されてる」
アオイが叫んだ。
「ええっ」
甲板から海を見ると血が拡がってる。
「シーサーペントは逃がしてくれ! リヴァイアは? 」
「リヴァイアは堅い鱗で守られてるから大丈夫だけど、シーサーペントはまずいです」
アオイが答えた。
「これで、早く逃げれなくなったね」
ミツキが焦ってる。
いや、俺も焦ってるんだが。
「ち、ちょっと、両手を拡げて、こっちに向かって来てるんだけど」
ミヤビ王女が怯えてる。
見てみたら、本当だ。
しかも、顔がキスするような顔してる。
勘弁してください。
どう見てもババアにしか見えない。
「って……おい……いくつなんだよ」
俺が悲鳴のように叫んだ。
「三十後半……いや、四十後半かな? 」
クニヒト大佐が横で冷静に人魚姫を見てる。
「ちょっと、親父、あの人、いくつなの? 」
俺が焦りまくって聞いた。
「いや、二十後半って聞いたんだが……」
「見えないんだけど」
白人だから老けて見えるんだろうけど、ちょっと老け過ぎじゃね?
「え? でも、四十過ぎって聞いたけど」
麗が驚いた。
「は? 」
「四十いってると思うよ。五十って話もある」
恋も答えた。
「え? 」
「私も、そのくらいって聞いた」
紅葉が言った。
「親父! 相手の年くらい確認しといてくれよ! 」
「だって、人魚姫って言うから、姫の年齢かと思ったし……」
「もう、すっごい迷惑なんだけど。本当に迷惑なんだけど」
カガが親父にあてつけるような顔をした。
「馬鹿馬鹿しい。これで終わりじゃ! 」
龍女さんが手をかざして、人魚姫に向けて爆発させたが、これまた鮫や魚が跳ねてかわりに受け止めた。
魚の死骸があちこちに飛び散って散乱した。
「地獄絵図だな」
カルロス一世の顔も引き攣ってる。
いきなり船が揺れた。
「な、何? 」
俺が聞いた。
「凄い大型の鮫が体当たりしてる」
アオイが答えた。
やばい、船が沈んだら終わりだ。
なんで、こんな目に会うのか。