第二十四部 第十一章 第二の厄介な許嫁
「良く考えたら、チャンスだ。今のうちにシーサーペントに船を引っ張って貰って、急いで相手から離れよう」
俺がアオイに頼んだ。
「分かりました」
アオイがすぐに指示に従がった。
うちの豪華高速帆船が緊急に発進して市松人形から離れていく。
「まてぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇえええ」
巨大な市松人形のまま、こちらに走ってこようとしてる。
信じがたい姿だ。
だが、海に足を取られて、満足にこちらに進めない。
「まあ、当たり前だよな」
親父が横で呟いた。
顔はまだ土気色のままだ。
市松人形のままでは追っかけれないと見たのか市松人形の外側の樹が崩れていく。
イージス艦に戻る気なのだろう。
「今だ! リヴァイア! もう一発市松人形に猛爆攻撃をぶち込んで! 」
ミツキが叫んだ。
リヴァイアの狙い澄ました猛爆攻撃の火箭が崩れた市松人形に飛ぶ。
しかし、それをイージス艦からはみ出すように出てきた、市松人形とぬいぐるみ達が飛びこんで受ける。
「まだ、市松人形とかいるのか」
俺がため息をついた。
どれだけ市松人形とかぬいぐるみがいるんだか。
直撃はそれのせいで避けられた。
しかし、その爆発によって、市松人形の巨大な崩れかけの姿が吹き飛ばされた。
沈没はしなかったようだが、吹き飛ばされたイージス艦には、かなりのダメージがあったように見える。
「早く、逃げて! 」
俺が叫んだ。
「ちょっと、待ってくれ」
アポリトが叫んだ。
手に縄を持っている。
「どうした? 」
「宰相が船の外板に掴まってる」
「え? マジなの? 」
アポリトが浮くものを結んで、海に投げた。
親父も慌てて、宰相の引き上げを手伝った。
「じゃあ、宰相を回収したら、逃げよう」
引き上げられた宰相がびっしょり濡れて甲板に蹲ってる。
「な、なんでリヴァイアに攻撃させたの? 」
宰相が聞いた。
「ああしないと、お父様を開放しないと思ったからです」
きっぱりとアオイが答えた。
「お父さんなら、生きてると思ったから」
ミオも笑顔だ。
宰相が娘がやったと気が付いてがっくりと項垂れる。
「いつか、お前も娘とかに同じようにされるんだろうな」
クニヒト大佐が小声で俺に囁いた。
「やかましいわ」
腹が立ったんで言い返した。
あまり考えたくないし。
「とにかく、今は逃げないと」
ミツキも慌ててる。
「兄弟。……言っていいか? 」
アポリトが俺の後ろを見て、こわばった顔をしている。
はっきり言って、その先は聞きたくないし、俺の後ろ側に何があるのか考えたくない。
「なんだ、あれ? 」
カルロス一世がドン引いてる。
親父の顔がドンドンさらに土気色になっている。
仕方ないので、振り返った。
大量の魚の上に女の人が立ってる。
なんか貝殻を水着につけて着ている。
はっきり言ってババアだ。
ババアにしか見えない容姿だ。
ババアが貝殻をつけた水着を着てる。
涙が出そう。
「えーーーと、何あれ? 」
「……ちょっと……あれ……」
恋が震えてる。
「まさか、人魚姫か? 」
麗が驚いたように叫んだ。
凄い厳しい顔をしてる。
「嘘でしょ。海で会ったら一番いけない奴じゃん。えええええ? まさか、あれも許嫁なの? 」
紅葉が震えてる。
親父を見ると土気色の顔で無言だ。
「あぅ」
勘弁してください。




