第二十四部 第十章 市松人形
イージス艦とこちらの船が荒れる波を耐え凌いだ。
「くそくそくそくそ。こいつ、おまえたちのおやじゃないのか。だまされた。だまされた。だまされた。」
また、イージス艦から拡声器を通したような子供の声がした。
宰相が市松人形達にぽいっと海に放り捨てられる。
泳いでる宰相の顔は見えないけど、宰相を見てて凄いせつない。
「これを狙ってたのです」
アオイが厳かに言った。
「ふう、演技をしたかいがあった」
ミオもほっと一息ついた。
でも、二人とも気にしないでぶち込んでたよね。
そう思いつつも怖くて突っ込めません。
「本当に? 」
クニヒト大佐が突っ込んだ。
「え? 」
アオイとミオがメスカマキリの目で見る。
「あ、本当だ。さすがですね」
クニヒト大佐がジャンガリアンハムスターのようなつぶらな目で答えた。
カルロス一世とアポリトがクニヒト大佐を馬鹿がと言うような目で見た。
「幸い、ここはヤマトから近いので、ヤマトの聖樹の力を借りましょう」
レイナさんが手をイージス艦に向けた。
イージス艦に海中から樹が伸びて巻きついていく。
それは凄い勢いで、ミサイルの発射口など全体にまるでツタのように樹が絡み付いた。
「ああああああああ。きさまら。きさまら……これでかったつもりか? 」
少女の声が小馬鹿にしたように叫んだ。
「嘘っ! 」
レイナさんが叫ぶ。
「ど、どうしたの? 」
「樹のコントロールを……奪ってる。まずい」
レイナさんが青くなってる。
「リヴァイア、イージス艦に拡がってる樹の根本を猛爆攻撃で斬り落として! 」
アオイが叫んだ。
リヴァイアが小さな火箭を海中からイージス艦に絡み付いている樹を破壊して切り落とした。
それらの切り落とされた樹がイージス艦に巻きついて拡がり、人の形になりだす。
イージス艦を中核にしながら、それが巨大な市松人形になる。
「嘘だろ……」
カルロス一世が唖然として呟いた。
「いや、あれ、意味あるのかな? 」
俺が唖然として言った。
「俺も思った」
親父も横で言った。
だって、イージス艦の武器使えないし、何故に市松人形?
わけがわかんねぇ。
しかも、海をより分けるように、五百メートルくらいの大きさがある樹で出来た市松人形がこちらに向かって歩いてやってくる。
「頭がおかしくなりそうだ」
アポリトが頭を抱えた。
市松人形の腹にいくつもの穴が出来た。
そこから、ミサイルがこちらに向かって飛んでくる。
「え? ありなん? 」
あまりの出来事に唖然としてるとカガが手をそちらに向けた。
こちらの豪華高速帆船に届く前にミサイルが途中で全部爆発した。
「ちょっと、僕ばかりに防御をやらさないで欲しいんだけど」
カガがご立腹だ。
今度は市松人形が口を開いて、ゲロを吐いたように見えた。
だが、ゲロで無く魚雷だった。
68式か97式かしらんが魚雷がまっすぐにこちらに向かって三本やってくる。
「何でもありだな」
親父が感心したように呟いた。
カガがまた手をかざして、魚雷をこちらに来る前に起爆させた。
「君ら、いい加減に自分達でもなんとかしなよ」
カガが呆れ果ててる。
そうは言っても、何が何だか分かんない。
なんだ、この展開。