第二十四部 第四章 それ
俺達が船内に入ると、衛兵たちがタラップに乗ろうとしたところで、タラップがずるりと海に落ちた。
衛兵達が騒いでる。
「あー、落としちゃったか」
ヨシアキ大佐がそれを見てため息ついた。
「いや、落とされたんだ」
親父が笑ってる。
「え? それはどういう事? 」
「衛兵は乗って来るなって事だろ? まあ、ゆっくり話したいんだろ」
「ええ? 」
「おーい、お前等はそこで待っててくれ! 」
親父が大声で怒鳴った。
「え? ホラーなん? 今回? 」
俺が驚いて聞いた。
「いや、ホラーって言えばホラーだけども、別に怖くないと思うがね」
親父がにやりとした。
親父がドンドン気にもせずに船室の中に入っていく。
そして、食堂の前で止まった。
「多分、ここだろう」
笑いながら躊躇なくドアを開けて中に入る。
そこに、中空に浮かんでいる少年みたいな少女か、少女みたいな少年か、どちらか性別が分からない様な七歳か八歳くらいの子供が座ったまま浮いている。
「おや、久しぶりだな。もう三十年以上も前になるか」
親父が笑いながら答えた。
「ちゃんと覚えててくれたんだね。久しぶりだ。シュウジ」
その子はじっと親父を見てる。
「しかし、本当に年を取らないんだな? 」
「君の奥さんと一緒だよ」
笑いながらそれは答えた。
「どなた? 」
俺が首を傾げながら聞いた。
どこかで感じた気配だが。
「ああ、太古の古の血の御方って奴さ」
「こないだは、僕の眷属が迷惑をかけたね」
それは笑って言った。
ぞっとする美しさもありながら、温かみのあるものを内包しているような笑顔だった。
「って、魔人? 」
「うん。聖王とか言う愚か者の娘の事さ。まさか、<終末の子>にまで迷惑をかけると思わなかった。率直にすまないと思う」
それが笑って答えた。
「アポリト達は? 」
「ああ、部屋で寝て貰ってるよ。別に何もしてないから安心して」
おれが聞くと、それは優しく笑った。
「一体、何をしに……」
ヨシアキ大佐が聞いた。
相当警戒してるのが分かる。
「ああ、<終末の子>に会いに来たのさ」
「まさか、<終末の子>とは思わなかったが、お前に大切な御子が産まれると言われたんだったな。七歳だっけか? 」
「ええ? そんな昔なの? 」
「ああ、おれも半信半疑だったし、育ってきたら性格が俺そっくりだから無いわーと思ってたんだが、まさか、<終末の子>とはお前が高校生になるまで思わなかった」
「まあ、まだ子供の君に、詳しくは言う訳にはいかなかったしね」
それが笑顔で答えた。
「一つ聞きたいのだが、俺は関係あるのかな? 」
カルロス一世が真剣にそれに聞いた。
「うん、君は関係無いけど」
「そうか。じゃあ、私はこれで」
カルロス一世が笑顔で手をあげて部屋を出て行こうとする。
「血のつながりは無いんだけど、君達に性格がそっくりだね」
それがカルロス一世を見ながら笑った。
そしたら、カルロス一世がショックを受けたらしく蹲った。
傍から見たらアホに見えるな。
「まあ、そう思うなよ。同じ状況なら君も似たようなものだろう? 」
あら、心が読める?
「そうだよ。君の心を読んだわけさ」
それがまた笑った。
「え? お前、何を思ったの? 」
カルロス一世が俺を見て聞いた。
「それは、とりあえず置いといて」
俺がイジュウイン家のお家芸の横に置いておく動作をしながらやった。
「く、くだらねー」
カルロス一世が毒ずいた。
「さて、今日は<終末の子>に話があってね」
くだらない俺とカルロス一世のやり取りを切るようにそれは言ってきた。