第三部 第七章 幸せを破壊する者たちへ
パトリダ近隣の国も全部載っている地図を見て、今後の計画を考えていた。
とにかくスーパーを拡げたい。
このやり方がばれたら、皆が真似するだろう。
その前に先行投資して後発から引き離すのだ。
従業員不足は潰した小売店から、引き抜いて社員として育成すれば良い。
金がいるので、株式会社でも作って出資金を募ろうか。
問題はやはり一番スーパーを出すならコンチュエが有望な事だ。
仕方ないので、カザンザキスさんの息子さんのイオアニスさんに表に出て貰おう。
いずれは叔父になる人だ。
俺の正体がばれたらまずい。
ここは必殺の引きこもりニート経営法だ。
「おお、兄弟。さらに拡大か? 」
アポリトが聞いてきた。
彼も海賊から、実業家への転身なので、どこへ出てもおかしくないようにドンドン服装がおしゃれになって、今や貴族のようだ。
だが、それも大切だ。
「例の新規事業はどうかな? 」
「ああ、好調だ」
アポリトがうれしそうだ。
実は宝くじをはじめた。
これも、イコゲニアであるニコス家のカザンザキスさんの信用があれば出来る事だ。
とんでもない金額が当たるようにして、それを大々的発表して渡した。
結局、胴元が儲かるのだが、一生遊んで暮らせる金が手に入る夢と言うのは、皆、捨てれないだろう。
これも当たった。
そこへ、アオイが入ってくる。
少し焦ってるようにも見えた。
カザンザキスさんも慌ててる。
「どうしたの? 」
「貴方がユウキである事がヤマトにばれたみたい」
アオイが慌ててる。
「は? 」
「え? 」
「何で? 」
思わず、絶句して、三回変な声が出た。
俺は用心に用心をして、引きこもりのエキスパートであるニートな俺本来の特殊技能を使用して、存在を隠蔽していたはずだ。
何故、ばれたんだ。
考えられない。
「実はコンチュエを最後に逃げ出した時に、高空でドラゴンに乗ってて監視してた人がいたの。その人がヤマトの人だったのかも」
アオイが真っ青になった。
「え? そんな奴いたの? 」
「正式にパトリダにヤマトから内々で打診があった。救世主を返して欲しいそうだ」
カザンザキスさんも慌ててる。
「どうしょう? 」
俺が思わず呟いた。
せっかく、ここまで手広くやってきたのに、まだスーパーのオープンすらしてないのに。
俺の商人へのジョブチェンジを邪魔するとは……。
「俺に、またニートでもしろと言うのか! 」
俺が震える様に叫んだ。
「いや、救世主に戻って欲しいだけだと思うが」
カザンザキスさんは冷静だ。
「誰も褒めてくれないし、お金も今に比べて少ないし、地位も無いし、ドンドン皆が離れていくし、最後に乗った帆船なんか、掃除用具部屋でくっさい毛布で寝させられるし、飯なんか残飯だし」
呪いの言葉のように愚痴が出る。
「え? マジなの? 」
カザンザキスさんが驚いて聞いてきた。
アオイが頷いた。
「ひ、酷いな。救世主だろ? 」
「ぼっちでしたから」
横で義兄弟のアポリトが貰い泣きしてる。
「兄弟! やるなら言え! 地獄まで付き合うぞ! 」
アポリトが叫んだ。
「いや、多分、勝てるから。ヤマトは滅ぼしちゃおうか」
俺が笑顔で答えた。
「君、一応、ヤマトの王族なんだよね? 」
カザンザキスさんがちよっと引いてる。
「いえ、ぼっちなんで血筋は関係ありません」
横でアポリトがうんうんと頷いた。