第二十二部 第十一章 聖樹装兵(せいじゅそうへい)の弱点
とっさに聖樹装兵の右手を上に突き出して殴ろうとしたけど、あっさり交わされた。
と同時に、聖王の狒々が目の前に現れて、俺の聖樹装兵を殴る。
いつもなら、そんなに効かないが、俺の聖樹装兵の装甲が風化したような感じになっている為か、かなりの衝撃を感じる。
ダグダ師匠が一瞬にして聖樹装兵で斬り込んで来て、聖王の狒々を斬るが、かすり傷しか負わせられない。
たいした、スピードだ。
魔人が右手を上げると手に長大な斬馬刀が現われる。
「これ、地下に落ちてきた子が持ってたんだけど」
右手で軽く振るように長大な斬馬刀を振り回した。
動きが早すぎて斬馬刀が見えない。
何と言う膂力。
「嘘? その子はどうなったの? 」
恋が叫ぶように聞いた。
「軽く捻ったら、腕が折れたんで逃げてったわよ。思ったより足が速かったんで、追うの辞めたけど」
魔人が哄笑した。
「良かった」
恋が少しほっとしたように答えた。
「で、知ってた? 聖樹装兵の弱点」
魔人が笑いながら斬馬刀で聖樹装兵の俺の右手を肘から斬り落とした。
右手の紋章ごと肘から斬り落とされたので、聖樹装兵の装甲が斬り落とされた右手に流れて、着装が解除された。
「あああああああああああああああ! 」
俺が斬り落とされた右手を見て絶叫を上げた。
「ね。紋章がある手を斬り落とされると、聖樹装兵が解除されるの」
右手から大量の出血が止まらない。
慌てて、例の集中する奴と回復魔法の真似事で右手の出血を止める。
「あーあー、腕落とされたくらいで悲鳴を上げるなんて駄目だね」
魔人が笑いながら俺を蹴りあげる。
俺が苦痛に呻きながら、近くの建物に文字通り壁にめり込んだ。
全身が激しく痛い。
「よくもぉぉぉぉ! 」
アオイが半狂乱になって、聖樹装兵の剣を振るって無我夢中で斬りかかる。
ミツキも同じく半狂乱になって聖樹装兵の剣を振るって魔人に斬り込んだ。
しかし、それらはまるで子供の遊びの様に避けられた。
「ははははは、だめだめ。我を忘れてる様じゃ無理だね」
シーサーペントの踊り食いを回避して何とか上陸して来た狒々達をカルロス一世達が聖樹装兵の剣を出して戦っている。
そんな乱戦の中で、魔人の前に俺を庇うように、ダグダ師匠が立ちはだかった。
ダグダ師匠が今までに見せた事の無い殺気と剣撃で魔人と斬り合う。
流石の魔人も押される。
「へぇ、君、強いじゃないか。でも、僕の相手は君じゃないしね」
ダグダ師匠の背後から、聖王の狒々が鉄の塊のような剣を持って斬りかかる。
ダグダ師匠がそれを避けて、聖王を斬りつけた。
しかし、その剣は聖王の身体に呑みこまれた。
そして、その両者の戦いをすり抜けるようにして俺の前に魔人が来た。
そのふっと魔人が油断したのに合わせて、俺が含み針を目に放つ。
しかし、それを目に受けても、全く魔人は気にしない。
それを見て、俺が驚いた。
眼球に針が刺さっているのに目を瞑らないなんて。
「へー、君、がっかりするような奴かと思ってたんだけど、驚いたね。全然戦う気が落ちてない。さすがは<終末の子>だ。楽しませてくれそうだ」
魔人が見た事も無いような笑いを浮かべた。
これは歓喜してると見ていいのだろうか?