全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十八部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 戦え 第五章
「俺の気配を持っているから、これで多少は怯んでくれたらいいんだけどな」
「盾にするにしたら、やはり遅いからな」
御堂祐樹の希望を修二さんが容赦なく否定する。
「何か、無いんですかね? あそこに神殿もある事だし……」
などと一言多い涼月東が光の混沌の女神様の赤ちゃんに聞いた。
なるほど、確かにああいう神殿にはそういうものがある可能性がある。
『ここは私の内的な部分の祈りの場でしかないです。私は基本は祈りを行うので……。ただ祈りによって世界が良くなるのを願うのです』
そう光の混沌の女神様の赤ちゃんが話す。
なるほど、シャーマン的な意味合いもあるのかなと思った。
「祈りは馬鹿に出来るものではないですよ。祈りこそ、全ての困難に打ち勝つ事が出来るものですから」
禊さんがそう断言した。
服も巫女さんみたいな服を前から着ているので、そういうポジションなのかもしれないけど。
「世界の安寧の祈りは光の混沌の女神様にお任せして、俺達はするべき事をしないとならない。だから、どうする? 打って出るか? 今なら外側に敵の創造主達の艦隊も女媧様達の阻止に向いていると言う事で、こちらに来そうなのは多分もう一人のヒモともう一人のミツキさんだけだ」
「いや、北派のまつろわぬものもいるからな。これがいると厄介だな」
祝融さんの激を飛ばすような言葉を御堂祐樹が冷静に否定する。
「それはサヨ母さんに任せたいところだな」
「ええ? 負けたのでは? 」
「いや、うちのサヨ母さん、今まで負けたことないけど、どっちかってーと本質はハートが強くていつまでも再戦するタイプだ。もう一人の俺に負けたのが辛いはずだから、絶対に何度でも戦いに来る」
などと修二さんが話す。
そう言えば昭和の文壇で一番喧嘩が強い人って言われた人って、実は強くないんだけど、負けても負けてもボロボロの身体で勝つまで毎日喧嘩を売ってくる人だって聞いたことがある。
腕が折れても下駄もって殴ってくるとかで、終わらない喧嘩が何か月も続くんで、皆がそれに音を上げて、もう俺の負けにしてくれって謝ってくるとか。
「俺の時はサヨ祖母はそうでも無かったけどな」
「なんだかんだ、子供がいなかったまつろわぬもので、孫は特に可愛いんだろ。徹底的にやり続けないのを初めて見たからな。お前がサヨ母さんと最後に戦った時の話だが」
修二さんが笑った。
まあ、孫が可愛いってのはあるよな。
「あ、援軍の創造主の艦隊も来た」
御堂祐樹が空を見上げて呟いた。
「えええ? 義兄弟、どのくらいいるんだ? 」
「凄い数だ。敵側に今3人の創造主がいるが、それの倍以上の創造主の艦隊が集まりだしている。ちゃんと混沌の女神様の祈りは皆に通じていたって事か? 」
御堂祐樹がそう笑った。
なるほど、混沌の女神様の主宰者としての威光はそれなりにあると言う事だ。
これなら、逆にここで粘れば、敵の様子も変わるかもしれない。
「ならば、ここは<見>だな」
修二さんが単なる戦わないと言う選択なのに、重々しく話す。
「いやいや、それはどうなのか」
「戦力は温存しよう」
祝融さんが異論を話すが、修二さんは変わらない。
なるほど、何も戦いに出るだけが正しいわけではない。
相手の動きと消耗を見て、それで動くのもありだ。
「いや、機先を制した方が良いのでは? 」
「ここぞと言うとこで出ると言う事が必要なのでは? 」
百戦錬磨だけど、もはや逃げるに特化した心の師匠のカルロス一世が断言する。
「戦いは何も生まないですよ」
などと涼月東がいきなりの話をした。
戦いに巻き込まれたくない。
そういうのが一心に感じられる様子だ。
俺も同じだ。
俺のような雑魚なんて、こんな激しい戦いになれば殺されてしまうだろう。
「すっかり、皆が毒されちゃったな」
一条和馬が俺を見て苦笑した。
「いや、じゃあ、あんたはどうするの? 」
「もちろん、<見>だ」
一条和馬も断言した。
<あわよくば俺達が戦わずに終わりますように>
そんな願いが皆から迸っていた。
 




