全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十七部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 赤子の光の混沌の女神様 第七章
「おおお、お前達も……」
そう必死に盾になっていた御堂祐樹が鉄のゴーレム達を見て喜んでいた。
鉄のゴーレム達もその時間が止まった無敵の身体で盾になる為に動き出した。
だが、彼らは動きが早い獅子の軍団に比べて遅かった。
それで、獅子の軍団の攻撃は阻止できないと見たら、彼らはその身体を壁になる様に祈るようなポーズで跪いて並ぶ。
壁になっても、百戦錬磨の獅子の軍団は止まらないだろう。
しかし、祈るポーズで跪くのは効いた。
戦いを止めてほしいと言う気持ちがそれで分かる。
一瞬の欲で動いたものが反射的に出る事でそれが戦闘になってしまったが、彼女たちは長い間に御堂祐樹の許嫁集団としてやってきて、それの情もあるのを思い出したのだ。
そして、鉄のゴーレムは御堂祐樹の魂の残り香であり、ある意味の分身である。
その気配は御堂祐樹と変わらない。
それで、今までの殺気立った雰囲気が和らいでいく。
何という奇跡。
やはり、一部が瞬発的に刹那に動いただけのようだ。
その鉄のゴーレムの愛ある行動で全ての流れが変わったのだ。
一夫多妻に関して文化と根付いている許嫁のヤマトの皇族達も怯んだ彼女たちに懇々と説得しているようだ。
「愛には愛と言う事だな」
などと意味不明な言葉をいつの間にか穴から出てきた心の師匠のカルロス一世が俺の肩にポンと手を置いて話す。
妻になりたいと言う愛だけではない、仲間への愛もあるのだと言いたいのかもしれないが、さっきまで隠れていた心の師匠のカルロス一世が穴から出てきたと言う事は危機は去ったと言う事だろう。
「何というか、炭鉱のカナリアみたいですね。心の師匠のカルロス一世は……」
涼月東が思った事を言ってしまう。
イギリスとアメリカでは昔は炭鉱の中にカナリアを持って入って、歌声が止まったらメタンガスとかの有害なガスが出たと判断して炭鉱から脱出するのだ。
心の師匠のカルロス一世は自己を守る為に誰よりも早く動いて対応するので危機を探知する意味では最高の探知機になる。
「お義母様ももうすぐいらっしゃるんですよ? 」
などとヤマトの皇族のレイナさんの言葉で完全に内紛は終わる。
やはり義母には良い顔をしておきたいのだろう。
どうやら、危機は去ったようだ。
それにしても、蒼穹船には乗ってこなかったようだ。
「そうか、女媧様もいらっしゃるか」
そう祝融さんがほっとしたように呟いた。
それによって修二さんがカキーンと固まる。
やはり奥さんは怖いのだ。
未来の御堂祐樹が浮気しようとした修二さんを幽閉してずっと閉じ込めていると言う話もあった。
つまり、修二さんは女媧様には逆らえないのだ。
ミツキさんも見ると渋々と言う感じである。
静かになった。
ひょっとして……これはもう一人の修二さんとミツキさんに対してもストッパーとして女媧様が効くのではないか。
思わぬ解決法が出て来たのでは無いか?
などと俺が思った。
二つに分かれたと言っても修二さんもミツキさんも修二さんとミツキさんなのだ。
条件反射のように大人しくなるなら、これは使えるのでは?
「良くやった! 確かにそれは言えているかもしれん! 女媧様ならこの戦いを止めれるかもしれない! 」
祝融さんが喜んでいた。
「まあ、いくつになっても母親には逆らえない家ってありますからね」
などとアポリトさんも頷いた。
『素晴らしい。これは思わぬ突破口になるかもしれません』
光の混沌の女神様の赤ちゃんが喜んでいる。
全く光の見えない状態になっていた、この状況で初めて光が見えてきたのだ。
皆もおおおおって感じで喜んでいた。
「いやいや、母さんは来ないよ。混沌の女神様の避難場所に来ると、敵にバレさせる事になるから、うちの嫁はそういうのは察して来ないよ」
などと修二さんが自信たっぷりに言って威張った。
来てほしくないんだな。
本気で子供でやんの。




