全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十七部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 赤子の光の混沌の女神様 第六章
子供達の夢の職業であるユーチューバー。
それは巨万の富を生むこともあるのだ。
「今は今一つになっているようだがな」
などと修二さんが突っ込んできた。
いやいや、貴方がユーチューバーを勧めたのに。
「何でも、そうだよ。世間が儲かると知り出したら、こういうものは終わりなのだ」
修二さんがそう悲しそうに呟いた。
なるほど、そういう流行りのものを転々と追いかけてきた経験から来ているらしい。
「例えば、昔は同人誌。特にエロは凄く儲かったのだ。真面目に年収が億近くいく奴もいた。あまりに儲かるので、アシスタントを入れてそこそこの雑誌社で漫画を書くより遥かに楽に儲かった。だから、当時の編集は同人誌の方に連載漫画家達が集中しちゃって、漫画を書かなくなるのを困ってた。同人誌なら数か月くらいの期間でたった30ページくらいだし、アシスタント代で原稿料が飛んでしまう漫画家と違って、その気になれば一人で書ける。それを年に数冊出せばウハウハだった。特にすでに漫画家の場合は同人誌をファンが買っていくので効率が良かった。コミックの著作権の一割どころでなく、下手したら一冊で五割とかお金が入るからな。とうとうヤクザすら目をつけて、自分で書いて売る奴まで出た」
「ヤクザですか? 確かに聞いたことがありますね。彼らはそういうお金になる場所には必ず現れると」
「その通りだ。それだけ儲かったんだよ。何しろ、不特定多数に売るんだからバレにくい、税務署もそういうのは理解してなかったし、誤魔化せたんだ。当時はな? 」
「おおおお」
俺が感動した。
「貴方達は何を言っているんですか? 」
禊さんが唖然としていた。
目の前では御堂祐樹がボロボロになりながら皆の盾役をしていた。
流れが変わり、一夫多妻を容認できる文化のあるヤマトの皇族の許嫁達も暴走している許嫁達を止めようとしているくらい、ごっちゃになった戦いが目の前に広がっていた。
でも、俺は今は文月家から追放されるので、とにかく、次の職業への気持ちが強い。
まずは自分の飯のタネだ。
修二さんが俺が喋っていたので、コクリと頷いてくれた。
「馬鹿なん? 君まで馬鹿になったん? 」
「どうにかしろよ! もう一人ヒモみたいなのが増えたじゃないかっ! 」
アポリトさんと祝融さんが叫ぶ。
皆が許嫁達の攻撃の被弾を伏せながら避難がましい目で俺と修二さんを見ていた。
とうとう涼月東までそういう目をしていた。
「だがな。いつかはそういう儲かる時って終わるんだ。その分野が段々寂れてくるのもあるが、当時SNSが流行りだしてた頃で、馬鹿が今回のコミケの上がりって4000万くらいの札束を写真で撮って出しやがった」
「そ、それはっ! 」
「その通りだ。税務署がそれでそんなに儲かるのかと驚いて、早速に一斉に税務調査に入ってきた。そりゃ宝の山だ。彼らは全ての口座のやり取りを全部見れるからな。印刷所への銀行からの振り込みがあれば調査にも行ける」
「おおおぉっ、お土産を取られちゃうんですね」
「税務調査に入った以上、調査に使った時間トータルが自分の調査で使った時給以下だと処罰されるからな。彼らも必死だ」
「世知辛い世界ですね」
「その通りだ」
などと修二さんが頷いた。
「いや、そんな場合じゃないだろ? 」
「もう、目の前がバトルロイヤルになってんだが? 」
祝融さんが俺達に目の前の状況を認識させようと必死だ。
だが、俺達だって生きていかなきゃならない。
いろんな怪しい生活をしていた修二さんの話は非常に勉強になる。
「マジで喋っちゃう呪いでなくて、性格が似てくる呪いなのでは? 」
「まあ、感化されるからなぁ」
などと叢雲さんと一条和馬が伏せながら苦笑していた。
皆、似てくるのかもしれない。
『いい加減にしなさい! とにかく、そんな事は良いから! 目の前の事に対処しなさい! 戦いを止めなさい! 』
光の混沌の女神様の赤ちゃんがテレパスで発狂したように叫んだ。
そうしたら、鉄のゴーレム達が一斉に動き出した。
この争いを止める気らしい。
そう言えば魂は御堂祐樹の残り香みたいなものだし。